小説『リリカル世界にお気楽転生者が転生《完結》』
作者:こいし()

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 それから8年が経った。高町なのはが魔法の力を手にしてから考えればおおよそ10年が経っている。

 この10年で様々な事があった。高町なのはが巻き込まれたロストロギア事件であるジュエルシード事件やその半年後に巻き込まれた闇の書事件。その二つの事件の当事者達の管理局入り、高町なのはの撃墜事件、他にもあげれば色々有るのだが、まぁ多くの事件が有ったのだ。
 そして、それを高町なのは並びにフェイト・テスタロッサや八神はやて、ヴォルケンリッターにアリシア・テスタロッサは次々と解決し、実力を伸ばして行った。

 そして現在、未だに高町なのはは自身の怪我を治した男の事を思い出していないし、会えてもいない。また、アリシア・テスタロッサはとりあえずその疑問や悲しみを乗り越えたが、未だにその謎の原因は分かっていない。
 だが、それでも手掛かりはあった。それはジュエルシード事件や闇の書事件で撮られた映像に映る、一人の男。自分達と知り合いであるかのように会話し、アリシアとは随分と仲がよさそうだった。残念ながら音声は無いのだが、その様子から映っている男が自分達にとってとても大切な人だった事は彼女達も理解出来た。
 映像に映る男を見れば、その年はとても若く見え、18〜20歳程かと思える。10年経った今なら30歳位になっているだろうと予測がついた。

 それが分かれば、と彼女達はこの8年間、仕事の合間にその男を探し続けた。だが、結果的にその男は見つからなかった。
 一応アリシアの身体検査で誰かとある種の魔力ラインが繋がっている事が分かっているので、恐らくその男と繋がっているのだろうとアリシアは予想している。故に、死んではいないという事は分かっていた。



 そして、そんな日々を送る少女達は現在19歳。管理局では既にエース級の魔導師として名を轟かせ、高町なのははエースオブエースと呼ばれるほどになっていた――――




 ◇ ◇ ◇




「ふぅ……さて、それじゃあそろそろ逃げるのはお終いにしようかな」

 そんな中、探されている男。泉ヶ仙珱嗄は、無人世界を転々としながら自身の研鑽に費やしていた。何故かというと、神崎零を助けて得た原作知識を見ると、第三期の戦闘が尋常じゃない位馬鹿威力の魔法が意味もなくバカスカ撃ちまくられる物だったからだ。それに、関わってくるロストロギアの規模も闇の書やジュエルシードの比では無い位の物だった。故に、その戦闘に置いていかれない様に自身の研磨をする必要があったのだ。

 そして、この10年間自身の研鑽をし続けた結果。魔力量ランクはAAAランクからSS−まで上がり、その身体能力には磨きが掛かっていた。
 ハンターハンターの世界にで磨き抜かれて限界の感じていた身体能力だが、このリリカルなのはの世界には魔法という便利な物が有り、珱嗄はそれを全て扱う人間だ。そこで、珱嗄の使った魔法は今までも使った事のある魔法、【覚醒魔法】と【欠落魔法】の二つ。
 珱嗄はまず、指定した物を永久に消失させ、二度と元には戻らない魔法【欠落魔法】で自身の成長限界を焼失させた。だが、この魔法は人生で一度しか使えないという欠点があった。もう一度使おうとすると最初に使った反動で、二度と魔法が使えなくなる。まぁ珱嗄としてはもう使う気はないので別に良かった。
 そして、限界の無くなった珱嗄は5年間修行して、耐久力を鍛え上げた。そして次に【覚醒魔法】を使って自身の潜在能力を覚醒させ、更に5年間鍛えた。【覚醒魔法】を使った直後、反動で一ヵ月は動けなくなったのだが、耐久力を鍛えた成果も有って死にはしなかった。結果、珱嗄の実力は10年前とは桁外れに上昇したのだった。

 その成長速度は通常とは異なってとても異常だった。普通の魔導師が10年間修行に費やした場合と珱嗄のこの10年間を比べると、その成長度は天と地の差だ。月と(すっぽん)とも言う。

「えーと……どこだっけ? 確か管理局の本拠地の世界は……えー……と、そう! ミッドチルダ!」

 珱嗄はぽんっと手を叩いて思い出す。そして研鑽された転移魔法を行使、恐るべき速さで展開された魔法陣は3メートル程の大きさになる。そして次の瞬間には、珱嗄の身体をふっと別の場所へと運んだのだった。




 ◇




 はやてside


「え? 新しい人が機動六課に来る?」

「はい。一応お伝えしましたので。では」

 八神はやては、管理局で新たな部隊。機動六課を建設、部隊長になっていた。そして、その部隊のメンバーはエースオブエース、高町なのは。有望執務官、フェイト・テスタロッサ。はやての従者、夜天の書の守護騎士ヴォルケンリッター。そして、部隊長やなのは、フェイトが目を付けた新人4人という過剰戦力。
 そんなメンバーで構成された部隊、機動六課の目的はロストロギアに関する事件の解決。そこに新たな人員が入ってくるという話が持ち寄せられた。

「……まだ新人達の移籍も済んでない内に新しい人がウチに来る……? 怪しいなぁ……」

 八神はやては出て行った見覚えのない局員を見送りながら考える。元々、自分や機動六課は好ましく思われていない。管理局の陸軍である108部隊や地上本部は特にそうだ。地上本部の長であるレジアス・ゲイズはその最たる人物である。
 そんな人物がいる中、何も知らない人物が入隊。それはスパイや敵の可能性を浮上させる。

「……まぁ疑ってもしょうがないんやけど……内が部隊長やし、そういう所に頭が働くようにせんと」

 そんなはやての頭に浮かぶのは、どこか懐かしい男の背中。小さい頃、一緒にいたような大切な人の背中。思い出すと落ちつくその男の温かさが、少しだけはやての心に温もりを齎した。

「ふぅ、さて! それじゃあその人迎えに―――」

 はやてが気を気を取り直して立ち上がったその瞬間。




 (ビーーーーーーーーーー!!!!)




 警報が鳴り響いた。ソレの意味するものは、侵入者。機動六課の中に、悠々と侵入した者が現れたのだ。

「次から次へと……今日は厄日か……!」

 はやてはそんな問題が次々と舞い起こる事に苛立ち、その顔に影を落とす。そしてギンっと何かを睨むように眼を鋭くした。


「ええやろ……その侵入者。全力全開で叩き潰したるわぁ!!」




 ◇ ◇ ◇




「え、それじゃあアンタ神様?」

「そう神様」

 機動六課の侵入者は、お察しの通り珱嗄である。そして、珱嗄は先程はやてに報告していた局員と会話していた。

「なんでまた……」

「いやぁ、此処10年お前修行ばかりで面白くないからさぁ……意地でも関わらせてやろうと思って、機動六課に入る様に手ェ回しといたから」

 その局員は、珱嗄を転生させた神様だった。どうやら六課に入る新入局員は珱嗄の事だったようだ。

「まぁそいつはありがたいねぇ」

「じゃ、追々お前の義妹ちゃん(笑)が迎えに来るから。それに従えば良いよ」

「おー、さんくー」

 珱嗄がそう言うと、局員の振りをした神様はふっと消えて行った。多分もう出てくる事はない。そしてソレを見送った珱嗄は嘆息し、ゆらりと笑う。
 そしてふと自身の広範囲に及ぶ察知に反応が有った。もはや無意識に感じ取れるので確かだろう。

「さて、お迎えかな………え?」

「アンタが侵入者か! 次々と問題を持ってきおって! もうゆるさへん! 私の憂さ晴らしに付き合って貰うで!!」←テンションあがって周りが見えてない

「……あー、なるほど。仕事で疲れてるのか……全く、この義妹は―――面白い」


 珱嗄はゆらりと笑い、目の前にいる臨戦態勢の八神はやて並びに高町なのは、フェイト・テスタロッサ、アリシア・テスタロッサの4名に対峙したのだった。




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