小説『リリカル世界にお気楽転生者が転生《完結》』
作者:こいし()

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「っ!? ……フェイトちゃん、あの人」

「うん、ずっと探してた……あの人だ。でも10年前のまま変わってない……?」

 はやてと珱嗄が対峙している中、フェイトとなのはは珱嗄の容姿を見て10年前の男と確信した。また、やっと会えた喜びと、その彼が侵入者である疑問が生まれた。

「アンタの持ってきた問題でこっちはイライラしとんねん! とりあえず拘束して話聞かせてもらおか!!」

「オッケーオッケー。とりあえず、お前らが俺を侵入者扱いしてるのは分かったよ。それで、俺を拘束すると……はぁ、神様……やるならちゃんと手続きしといてくれよ……全く。仕方ない、返り討ちして話を付けるとしよう」

 はやてと珱嗄は対象的な反応で臨戦態勢に入る。その流れで疑問が残るものの、なのはとフェイトも戦闘態勢に入った。
 だが、見ると珱嗄の服装は少し着こなしがおかしい和服姿。とてもバリアジャケットには見えないし、魔力も感じられないので全くの丸腰だった。そんな相手に向かうのは少しだけやり辛いのだが、それでも侵入者である以上、拘束しないと暴れる危険性があるのだ。

「それじゃ、いくd―――!?」

「おいおい、まるで成長なしか。遅すぎるぞ、はやて」

 はやてが威勢よく魔法を発動させるべく魔力を練る。だが、珱嗄は魔力が練り上がる前にはやての懐に入っていた。魔法で空に浮かんでいるはやてに、地面を蹴って跳び肉薄する。そしてそのまま珱嗄は空中でくるりと回ってはやての脇腹に回し蹴りを当てた。
 その蹴りの威力は、はやてのあばらをメキメキと軋ませてその身体を吹き飛ばす。空中に浮かんでいたおかげで何かにぶつかる事はなく、止まる事は出来たのだがはやては一瞬意識を飛ばされた。

「げほっ……っぅ……なんて威力や…!」

「あれ? そこそこの力で入れたんだけどなぁ……ああ、なるほど。はやてはチートだったっけ」

 珱嗄は少し意外そうな顔で空中に浮遊する。そしてはやてがまだ健在である事の疑問をすぐに払拭する。元々、珱嗄のおかげではやての性能はとてつもなく高い。無限大と言っても過言でもない程の魔力と、膨大な量の魔法。無意識魔法という便利な物まで持っている彼女は蹴りが当たる前に本能的に防御魔法を展開し、威力を軽減していたのだ。

「次h―――おっと?」

「プラズマランサー、ファイア!」

「ディバインシューター、シューット!!」

 珱嗄がはやてに気を取られている隙に、なのはとフェイトは複数の魔力弾を撃ち込む。珱嗄は冷静にその場を飛び退いて魔力弾を躱すが、魔力弾はなのはやフェイトのコントロール下にある。外れた魔力弾は珱嗄を追尾し、迫って来た。

「追尾式か……なら!」

 珱嗄は追尾してくる魔力弾に対して、バインドを仕掛ける。アリシアと珱嗄の作りあげた魔法殺しのバインド、【魔法殺しの鎖(マジックオブキリングチェイン)】。
 それは魔力弾を全て拘束し、その性質に則って魔力弾を消失させた。

「これは、アリシアちゃんの……!?」

「なんで……!」

 なのははそのバインド魔法に驚愕するが、すぐに気を取り直して砲撃魔法を準備する。そしてその準備が終わるまで、フェイトとアリシアが前に出た。

「なんで私の魔法を使えるの……!」

「そいつは内緒だよ。アリシア!」

「きゃっ!?」

 珱嗄はアリシアの拳を受け止め、受け流して地面へと投げ飛ばす。そして次にやってきたフェイトへ視線を動かした。

「ザンバーフォーム! はあああ!!」

 フェイトはデバイス、バルディッシュの形態を魔力刃の形に変えて斬り掛かってくる。だが、珱嗄は素手に魔力を纏わせて魔力刃の側面を押して刃の軌道を逸らし、その攻撃を回避する。そして空振った事で体勢の崩れたフェイトの腹に拳を当てて、ドスッと押した。

「がはっ……!?」

「殴る、じゃない。鎧透しとか衝撃透しの技術なんだけど……所謂バリアジェケット無効化攻撃だ」

 珱嗄はダメージでひるんだフェイトにそう言って、そのまま服を掴んでなのはの方向へ投げ飛ばした。

「フェイトちゃん!?」

「うっ……げほげほっ…!」

 なのははそれによって飛んできたフェイトを受け止める為にチャージを中断する。フェイトはなんとか身体の中身に直接響いた衝撃を堪えてまた体勢を立て直す。

「大丈夫、まだやれるよ……でもあの人、強い」

「うん……でも、やっと見つけたんだもん。お話、したいもん」

 フェイトとなのははそう言って珱嗄を見る。珱嗄はその視線の先で余裕そうにゆらりと笑っていた。

「はあああ!!」

 するとダメージを回復してやってきたはやてが珱嗄に魔力弾を放った。だが、それはバインドでまた消し去られる。

「魔法は全部アレで無効化される……アリシア姉さんと同じ魔法なら、近接格闘で上回るしかない……けど」

「アリシアちゃんを軽くあしらう実力だもんね……正直、勝てる要素がないよ」

 フェイトとなのははそう呟いて攻めあぐねる。はやてもそれに気付いているようで、珱嗄と距離を取って様子を窺う。アリシアも戻って来て珱嗄を睨みつけていた。

「どうする……」

「く……」

 フェイト達はそう言って動けない。だがそこへ珱嗄から声が掛かった。


「なぁー……お前ら……ちょっと話を聞いてくれないか? そろそろ面倒だぜ……というかここまで出来ないとは思わなかったよ……」


 珱嗄はそう言って、ため息を吐いた。そして両手を上げて気だるげに言った。


「あーはいはい。拘束でも何でもすればいいだろ。これだから堅苦しい奴は面倒なんだ……」









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