小説『リリカル世界にお気楽転生者が転生《完結》』
作者:こいし()

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 新人達と珱嗄が機動六課にやって来てか一ヵ月程経った。その間にあった事といえば、新人達と珱嗄の機動六課内の案内や各部隊を集めての自己紹介、そして珱嗄を除くフォワード陣の訓練の本格化位の物だった。
 珱嗄は訓練には参加せずに唯待機としてアリシアと寛ぎの毎日を過ごす。ただ珱嗄の魔力ランクはアリシアに匹敵する上に保有魔法量は他の追随を許さないので、基本遊撃部隊には付けられないリミッターを課せられる事になった。結果、珱嗄はその魔力量ランクはAまで落ちてしまい、魔導師ランクとしては全力出してA-がそこそこ。通常ならBランクになってしまった。

 もちろんはやてやなのは、フェイトにアリシア、ヴォルケンリッターはやり過ぎだろうと上の決定に反感を抱いたが、珱嗄は別に対して気にしていない。今となっては保有する魔法の5分の4.5は使えなくなった上に、基本的に攻撃魔法の殆どが威力激減。基本的に使える魔法としては魔力スフィアを生み出したり、魔力量に準じた砲撃魔法なんかがそれに当たる。まぁ稀少技術(レアスキル)に関しては魔力を糧にしない物なら使える。故に戦闘手段には事欠かない。
 リミッター程度で珱嗄の手札が尽きる筈もない。とは言っても、珱嗄の性格上稀少技術(レアスキル)は使わないので、そういう面も含めれば珱嗄の戦闘手段はほぼ8割ちょい封じたと言って良い。

 まぁここまでがこの一ヶ月間での機動六課の動向。ひいては珱嗄の身に起きた出来事だった。



 ◇



 で、その一ヵ月後である現在。新人達フォワード陣もそこそこ実力を伸ばして来ているようで、明日には専用のデバイスが支給される様だ。ちなみに、珱嗄には支給されない。どうやら既に持ってるだろ、と思われているようだ。持ってないのにね。

「で、今日は何の用かな?」

「うん。本題は置いといて」

「本題置いちゃ駄目だろ」

「何時になったら私達に記憶を戻してくれるの!」

 珱嗄がいつものように隊舎のソファで寝っ転がっていると、アリシアが本題を横に置いて突っかかって来た。そう、この一ヵ月間珱嗄は特に何もせずリミッターを付けた時以外宿舎のソファから離れた事は無い。ご飯はアリシアをパシって持って来させ、トイレや風呂なんかは流石に部屋に設置されている物を使うが、それ以外はほぼソファで寝ているのだ。
 当然、アリシア達は記憶を消したのは珱嗄だと知らされているし、その内記憶戻すとか言ってたとも知らされている。だが、珱嗄は何時まで経っても記憶を戻す気配がなかったのだ。

「あーいつかねぇ゛え゛エ゛……」

「何時なの!」

 アリシアにガクガクと揺らされて声も揺れる珱嗄。だが、アリシアはその答えにまたぷくーっと頬を膨らませて不機嫌になる。

「で、置いといた本題を取っておいで」

「うぅ……はやてとシグナムが部隊長室で待ってるから来てくれって」

「何の用かな?」

「さぁ……でもシグナムが結構嬉しそうだったから……多分模擬戦でもさせられるんじゃないかな」

 アリシアは珱嗄の問いにそう答えた。珱嗄はその答えにふむと頷き、昔を思い出す。シグナムは確かにそんな性格だったし、騎士としてより強い物と戦いたくなるという口癖で珱嗄にいつも模擬戦を挑んでいた。まぁ一度もやった事は無いが。

「ふーん……まぁ行ってみれば分かるか……」

 珱嗄はそう言って立ち上がり、久しぶりにソファから離れた。部屋を出て、部隊長室へ向かう……が、止まってアリシアに振り向いた。アリシアは首を傾げるが、珱嗄はそんなアリシアにゆらりと笑って言った。


「部隊長室って……何処だっけ?」



 ◇ ◇ ◇



「ほら、此処だよ」

「ありがとー。しつれーしまーす」

 アリシアに連れられてやってきた部隊長室。入ると、中には椅子に座ったはやてとその前に経つシグナムが居た。珱嗄の方を振り向くと、やっと来たかという感じに少し笑った。

「やっときたな。珱嗄さん、ちょいと頼みたい事があるんやけど」

「頼みたい事?」

「ああ。お前には主はやてやテスタロッサ妹とは桁外れのリミッターが付けられたが、それでも魔法を殆ど使わずに機動六課の最高戦力である部隊長、隊長勢を軽くあしらったそうだな。そこで、リミッター付きで悪いが私と模擬戦してもらいたい」

「その心は?」

「唯の実力測定だ。明日からはフォワード勢も専用デバイスで訓練を始める。そこで珱嗄にも訓練を手伝って貰いたいのだ。隊長副隊長といえど、教導以外の仕事も有るのでな」

 珱嗄の問いに、はやてとシグナムが答えた。とどのつまり、暇なら少しは手伝えと言っているのだ。

「……まぁ模擬戦は良いとして、俺は仕事しないって約束じゃなかった?」

「ソレ言われたら結構痛いんやけど……何分うちは人手不足やし、皆で助け合わんと」

「……アリシアは?」

「あれ? 知らんかったん? アリシアちゃんは普段ライトニングの訓練を良く手伝ってくれとるよ? エリオ君のスピードやキャロちゃんのポジションを考えるとバインドとかで捕まってしまうのは一番避けなあかん所や。そこで、【拘束好き(バインドマスター)】とまで言われとるアリシアちゃんに手伝って貰っとるんよ」

 珱嗄はだからアリシアはあまり隊舎にいなかったのかと納得する。そして、少し考えて考えついた様に言った。

「じゃあ俺はスターズの訓練を手伝えば良いの? 模擬戦云々は別として」

「せやな。模擬戦はスターズの子達に見て貰うし、その結果を見てなのはちゃんが上手く組み込んでくれるやろし」

「ふーん……いつ?」

「今から」

 珱嗄はその満面の笑みにサムズアップで言われた事に少しイラッと来たが、流石に昔の付き合いで性格を知っている上にかなり年上であるのでそこは我慢した。ちなみに、珱嗄の歳はこの世界に来た時から初めて28歳程。前世を含めれば1052歳となる。ハンターハンターの世界は長生きしたのだ。昔のままの容姿なのは魔法のおかげである。

「ま、いいや。じゃあやろうか。俺もリミッター有りでどれくらい戦えるか知りたかったし」

 珱嗄はそう言って、シグナムに向かってゆらりと笑った。


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