それからという物、ライトニングフォワードの二人と珱嗄は次々と現れるガジェットを珱嗄中心に粉砕し、レリックを捜索していた。また、エリオやキャロの連携も良く、キャロのフルバックというポジションからエリオに補助魔法を掛け、自身に近づいてきたガジェットは基本珱嗄が破壊するのだが、たまに肩に乗る龍、フリードが火炎放射で破壊する。エリオは自身が本日支給された専用デバイス、ストラーダを軽快に振り回す。
エリオのスピードは、流石はライトニングと言ったところか中々に速かった。とは言っても、エリオの歳と背丈にしてはという事だが。
「はぁっ……はぁっ……!」
「切りがないですね…!」
「いや、そうでもない」
エリオの息が切れてきた所で、珱嗄がそういう。その手にはレリックの保存ケースがあった。
「それって……」
「レリックだ。俺達の居るこの車両の中にあったよ。さて、それじゃああとは残りのガジェット……そうだな、あと8体だ。それを倒してスターズに合流する。さ、もうひと頑張りだ」
「「はい!」」
珱嗄とライトニングはそうしてレリックを無事回収。残るガジェットに対峙する。あと少し、という言葉にまた気合が湧いてきたエリオとキャロは大きな声で返事をした。
◇
その頃、スターズのフォワード。スバルとティアナは、訓練生だった頃からの付き合いも有り、連携の取れた動きで現れるガジェットを次々と破壊していた。スバルのリボルバーナックルという近接とティアナのクロスミラージュという遠距離。互いが互いの弱点を補い合う良いコンビネーションだ。
スバルがティアナに近づくガジェットを破壊しつつ、比較的低空にいるガジェットに攻撃していく。そしてティアナは上空を飛ぶガジェットと、スバルの後ろへ回るガジェットを的確に撃ち抜いていく。その精確さは、ティアナの努力を感じさせた。
「スバル! レリックは?」
「ない! 多分珱嗄さん達の方にあるんだと思う!」
「そう―――みたいね!」
戦闘の途中で会話できる程の余裕が彼女たちにはあった。また、そんな彼女達の現在地はリニアレールの最前車両。つまり、珱嗄に指示された前方車両にはレリックは無かったのだ。
「それじゃ――!」
『ティアナ、大丈夫か?』
「珱嗄さんですか? はい、こちらにはレリックは無いみたいで……」
ティアナがスバルに次の指示を回そうとした瞬間、珱嗄から念話が入る。ティアナは周囲を警戒しつつマルチタスクを利用して珱嗄に現状報告をした。
『ああ、こっちで見つけた。今の状況は?』
「ガジェットと戦闘中です。えと、数は残り5体、いえ3体です。終わらせてすぐに合流します!」
ティアナは珱嗄にそう報告し、更に近づくガジェットを撃ち抜いた。この分ならばすぐにでも終わらせられるだろう。
『分かった。それじゃこっちもすぐに終わるし、そっちも終わったら元の場所に戻って来てくれ』
「了解!」
そうして念話を切る。そして念話を切ってすぐに、スバルが残りの2体を必殺技であるディバインバスターで2体同時に撃ち抜き、破壊した。
「スバル! 珱嗄さん達がレリックを見つけたらしいから、合流するわよ」
「っと、オッケー!」
ティアナはスバルにそう言って、元の場所へと走り出す。スバルもそれに続く様にティアナと並走した。
「ティア!」
「?」
「ナイスコンビネーション!」
「……ふん、当たり前でしょ」
スバルの元気な笑顔にティアナはそっぽを向くようにそう言って、互いに拳をこつんとぶつけた。
◇
「……エリオ、大丈夫か?」
「は、はい……ありがとうございます」
珱嗄は現在、車両から落ちて崖下へ落下しようとしたエリオの手を掴み、リニアレールの側面に握力だけで捕まっていた。
こうなったのは、最後のガジェットがキャロの背後に現れて襲い掛かった所、キャロが吹き飛ばされたのだが、エリオがそれを庇って代わりに車両から落ちたのだ。そしてそれを珱嗄が助けた、という所。
そして最後のガジェットはフリードによる火炎放射で破壊された。
「ま、なんにせよ……キャロを守ったのはかっこよかったぜ、エリオ」
「は、はい!」
珱嗄はエリオを車両の上に立たせて、そう言う。エリオは珱嗄にそう言われてくすぐったそうに笑った。そしてそんなエリオにキャロが近づく。
「あ、あのエリオ君……助けてくれて、ありがとう」
「う、うん! どういたしまして」
互いに照れながらそう言う姿に、珱嗄はほのぼのした温かい目で眺めるばかりだった。
「あー……さて、また任務は終わってないんだ。さっさとスターズに合流しよう」
「「はい!」」
珱嗄の言葉に、二人とも元気に返事した。
◇ ◇ ◇
さて、それからはトントン拍子で進み、レリックは無事回収。ガジェットも全て破壊し、残骸もスターズとライトニングの平隊員達が回収した。
現在、隊長勢と珱嗄達は迎えに来た飛行機の中で機動六課へと戻っていた。フォワード達は任務を無事終えられた事に安堵し、隊長達はそんな新人達を見て微笑みを漏らした。
「珱嗄さん! 僕たちどうでした? 上手くやれてたでしょうか!?」
「珱嗄さん!」
「えー……」
そんな中、エリオとスバルが珱嗄にそう言って迫っていた。その後ろではキャロとティアナが呆れつつ笑っている。だが、その二人も珱嗄からの言葉を気にしているようだった。
「なんで俺がお前らの行動にコメントしないといけないんだ」
「えー……」
「むぅ……」
「……はぁ、そうだな。エリオとキャロは自分のポジションの役割に忠実に動いてて訓練一ヵ月にしては連携も取れてたな。スバルとティアナは俺が念話した時にはもう殆どガジェットを倒してたみたいだし、怪我もない様だから結構いいコンビなんじゃないか?」
珱嗄はしょぼんと肩を落とすフォワード達にため息を吐いて適当にコメントを入れた。すると、すぐに嬉しそうに顔色を変えたフォワード陣。珱嗄はそんな4人を見て、また口を開く。
「ただ、今回少し上手く行ったからって次上手くいくとは限らない。常に油断せず、慢心しない行動を取れるように心がけること。初心ってのはいつまで経っても自分を支える支柱になるからな」
『はい!』
元気に返事するフォワード達に少しだけ呆れる珱嗄だが、折角上手く行って喜ぶ新人達に水を差すこともないだろうとそのまま気だるそうに壁に寄り掛かって嘆息する。
すると、隣に座るアリシアが満足そうに笑って珱嗄に話しかける。
「随分と新人達に懐かれた様だね、珱嗄さん」
「まぁ……悪い気分ではないよ」
珱嗄はそう言って、ゆらりと笑う。
こうして機動六課のセカンドアラートの任務が終わった。そして、機動六課に帰って来た珱嗄達の前にあの人物が姿を現す事になるのだった―――