小説『リリカル世界にお気楽転生者が転生《完結》』
作者:こいし()

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 新年明けましておめでとうございます。読者皆様、今年は昨年以上に皆様が、そしてなにより自分も楽しめる様な小説を書いていきたいと思います! 珱嗄君共々、宜しくお願いいたします!




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 さて、珱嗄がアリシアの怒りに対して動けなかったのは逆補正による物だとして、珱嗄達がリニアレールからレリックを回収した時に、ガジェット越しではあるが機動六課のデータを取っていた人物がいた。
 そう、ガジェットの生みの親。今回の黒幕ジェイル・スカリエッティだ。空戦型のガジェットは高町なのは並びにフェイト・テスタロッサとアリシア・テスタロッサのデータを収集し、リニアレールにいたガジェットは珱嗄含むフォワード勢のデータを確実に収集した。

「ふむ……やはり、気になるのは彼……だな」

「どうしたのですか?」

「ああ、先日のリニアレールの件で出てきた機動六課の戦力データを見ていたのだが……彼は飛び抜けて実力が高い上に、魔導師でありながら魔導師らしくない強さを持っている」

 スカリエッティは空中に浮かぶスクリーンに流れる珱嗄達の戦闘を見て、そう判断する。しかも、密かに行なったスキャニングで珱嗄には厳重なリミッターが掛けられていることも分かった。それでこの実力。まさしく最強だった。
 また、その強さが魔法では無く身体能力にあることがスカリエッティにとっては驚愕だった。

 たしかに、魔導師足る物魔法を熟練させ、さらなる高みへと登るのが普通だ。それに多少身体能力も鍛えるだろうし、シューティングアーツという格闘技もある位だ。だが、それはあくまで魔法を活かす為に必要な物であって、魔導師にとってやはり一番は魔法なのだ。
 だが、珱嗄は全く逆。身体能力の為の魔法。魔導師というよりは魔法の使える拳闘家と言った方が正しい。珱嗄にとって、魔法は全て使いこなす事の出来る膨大な量の便利な武器だ。だが、それでも珱嗄の本領はやはり近接格闘における体術戦。魔法はその為の強化外装の様な物なのだ。

「……確かに、普通の魔導師とは違う戦い方をしますね。なんというか、肉弾戦に長けている様です」

「ああ、だが人間にこんな力は普通出せない。どんなに才能に恵まれ、体格に恵まれ、修行を重ねてきたとしても、彼の様な速度、筋力、技術量は異常だ」

「……」

「―――だが、だからこそ興味がある。あの肉体には人間の未だに解明されていない秘密がある! ふははは! いいじゃないか、ぞくぞくするよ! 彼を解剖してその秘密を知りたい!!」

 スカリエッティは身体の芯から湧きあがる興奮と探究心を抑えきれず、笑う。そして自分の身体を抱き抱える様にして震え、モニターに映る珱嗄にうっとりとした視線を向けた。そのモニターの奥にいる珱嗄に対して、自身の探究心と技術を全て使ってその肉体の異常性を知りたいと、スカリエッティは笑う。


「ふ、ふふふ……ふはははははは!!!」


 無限の欲望、狂気のマッドサイエンティスト、次元犯罪者、ジェイル・スカリエッティはただただ狂気の含まれた高笑いを、自身の研究室に響かせた。




 ◇ ◇ ◇




「さて、珱嗄先生には色々聞きたい事があるけど……まぁアリシアちゃんから手酷くお仕置きされたみたいだし、私達からは別に何もしないよ」

 そんな中、アリシアと珱嗄は神崎を引き摺りながらなのは達の下へとやって来ていた。アリシアはそこそこすっきりした顔をしており、珱嗄は少し身体を痛めたかのように肩をぐるぐると回している。神崎はそんな珱嗄の片手に襟を掴まれ、引き摺られていた。外傷は無い様だが、精神的にはかなりのダメージを負ったようだ。

「うん、とりあえず……お帰りなさい。珱嗄先生」

 そしてなのはとフェイトはそんな珱嗄に対して苦笑しながらお帰りと言った。元々、生徒と教師の関係でしかなかった珱嗄となのは。多少の助け合いは有った物の、さして親しい訳では無かった珱嗄とフェイト。そんな関係の二人は結局、家族だったアリシア程珱嗄に怒りは感じていなかったのだった。

「ああ、ただいま」

「まぁはやてが帰ってきたらヴォルケンリッターの皆と一緒に怒られるだろうけどね」

「あー、まぁその辺はどうにかするさ」

 珱嗄は頭を掻いてそう言う。

「まぁ心配させた珱嗄先生が悪いって事で。今回の訓練の話に入っても良いかな?」

「ああ、いいよ」

「ほら、零。起きて」

「はっ……!」

 なのはがそう言って、フェイトが神崎を起こした。そして、なのははフォワード勢を後ろに待たせているので率直に訓練内容を告げた。

「今回は珱嗄先生と零君で模擬戦をして欲しいの。リミッターがある中で珱嗄さんには悪いんだけど、やっぱり二人の戦いはフォワードの皆にもいい影響を与えると思うんだ。珱嗄さんはスバルの近接格闘やエリオの高速戦闘下での動きを学ばせられるし、零君は魔法の運用が上手いからティアナやキャロに色々と学ばせられるからね。どうかな?」

「あー、まぁいいよ」

「話が急だが、先生と戦えばいいのか。分かった」

「じゃあ決定! 今日は珱嗄先生と零君の模擬戦の観戦だよ」

 そうして、珱嗄と神崎の模擬戦が決まった。



 ◇ ◇ ◇



 ――模擬戦ルーム


「こんな時が来るとはねぇ……」

「まぁ、そうですね」

 珱嗄と神崎は、模擬戦ルームで対峙していた。なのは達は全員観戦室で珱嗄達を見ている。

「それにしても、魔力量を取っても特典を取っても俺の方が下なのになんでリミッター付けられてんだろうな?」

「まぁ、俺も上の方に掛けあっては見たんですが……」

「いいさ別に。俺はリミッター付いてても付いてなくても特に変わりない。戦闘方法が変わる位だ」

 珱嗄はそう言って、右手をぷらぷらと揺らす。実際、珱嗄の戦闘方法はリミッターありとなしでかなり変わってくる。リミッターが無ければ魔法と身体能力を両立させた圧倒的殲滅力を軸に置く戦闘法、リミッターが有れば身体能力オンリー、魔法による強化を使った単騎戦力としての戦闘法。この2通りだ。だが、珱嗄のこの戦闘法は両方とも同じ位得意とする戦闘術。
 あまり強さは変わらない。強さのジャンルは変わってくるが、それでも総合的な実力は変わらないだろう。


「ま、いいや。それじゃ始めようか」

「ああ」


 そうして、神崎は夫婦剣を投影し構える。そして珱嗄はいつも通り自然体で構えない。



 ビ――――!



 ブザーが鳴り、試合が始まる。二人の距離は瞬時に縮まり、ブザーが鳴り終わるその時、両者は衝突した。


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