小説『大切なもの(未定)』
作者:tetsuya()

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一人きりになれて、かなり冷静になれた。複雑な心境の要因もだいたいわかった。

 どうやら親友とはなればなれになる恐怖心が生じてしまったようだ。ほのかとは永遠の絆で結ばれていたい。

 そう願っても大親友との関係を永遠に続けられない。絆がいくら強くても、死別は防ぐ手立てはない。数秒後、数分後に佳代、ほのかのどちらかが死んでしまい、最悪の誕生日会になることもありえる。
 
 高確率で違っていたとしても、いつかはほのかは絶対にいなくなる。それは百パーセント正しい。

 ほのかが先に死亡したと仮定する。彼女の記憶を心に繋ぎとめることはできる。ただ忘れないと、胸に苦しみを与え続けるばかりで前に進めない。

 失ったときの痛みの大きさを考えると、大切な人の存在は必ずしも人生にプラスに働かず、多大な負の要素もつきまとう。大切に思っているからこそ、些細なことで悩み、苦しみ、もがく。どうでもよければさっさと忘れて次に進める。

 大切だと心に刻み込ませることは、無関心よりはるかにリスクが高い。真剣になればなるほど、苦しみ、悲しみ、欲望などが比例して大きくなるのだから。

 それを忘れて気持ちを切り替えるのは困難を極める。ガラスのハートとよばれるほど心はもろい。平行バランスを失い、進むべき方向を間違えてしまう。麻薬、殺人、ギャンブルがいけないということすら忘れてしまうほどに。たった一つ大切なものを失っただけで人格は百八十度変わる。

 自らの存在感を示すために、ストーカーになってまで心を掴もうとする。獲物を逃さないためにはなんだってやる。本人はストーカーについて無自覚であっても周りは冷静に見ており、自らの評価を一気に下げてしまう。

 人生における最大の失敗は冷静さを欠いたときに生み出される。冷静さを保っていればなんともなくても、追い詰められしまったり、焦っていて我を失っていると何をしているのかわからなくなる。

 冷静になって損害を止められるか、無鉄砲に突き進んでしまうかは本人次第。後者にならないよう神経を尖らせよう。後者になってしまうとストーカーと警察に警告されても、注意されても本人はやっていることは正しいと信じているためやめられない。結果はいうまでもないだろう。人生を棒に振る行為に出て、一生を取り戻せなくなる。

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