小説『大切なもの(未定)』
作者:tetsuya()

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「ほのかお待たせ」

「佳代、もう大丈夫?」

親友だと言葉の重みが違う。心が温まってきてジーンとしてきた。
 
「うん、ありがとう」

 元気になった佳代を見て、ほのかも安堵しているようだ。いきなりいなくなったことについては、追求してこない。

 佳代は先ほどのことをすっかり忘れ、ものすごく楽観的になっている。脳内はかなりのハイテンションだ。

 苦しいこと、辛いことはすぐに忘れるよう習慣付けている。過去は過去、未来は未来と割り切る姿勢がとても大事だ。

 たくさんの食材が並んでいる机を見回す。フライドチキン、白身フライ、いかリングフライなどが二人では食べきれないほど盛りつけられていた。

 親友からのプレゼントはいいな。心の温もりを感じる。

 これが彼氏だったらどうなのだろうか。大好きな人のプレゼントだと、もっともっとテンションが高くなるんだろうな。単純思考の佳代は、頭に花を咲かせてしまい、高額商品を買わされてしまうかも。肝心なところで考えが不足しがちだ。

 幸せを想像していたため、服の上に涎をこぼす。それを見た、ほのかはわざと口を押さえて笑いをこらえる仕草をする。

「佳代といると飽きないね」

 やや語気を強めていった。

「どういう意味?」 

「どんな展開が待ち受けているか、わからないからいつも楽しい。びっくりおもちゃ箱みたい」

「人を変人みたいにいわないでよ。わたしはこう見えてもしっかりものの社員で通ってるんだよ。美人でピチピチ、みんなを鼓舞するアイドルなんだから」

 ほのかが口元を手で押さえながら鼻で笑った。感情を抑えきれないのか、腹を抱えて笑い出してしまった。

「しっかりものでアイドルときたか。今の佳代は、ずぼらな元気娘の方がしっくりくるんじゃない」

 このままだといわれっぱなしになる。佳代も言い返すことにした。

「ほのかだって大学のアイドルとかいってもてはやされてるけど、わたしの方がぜんぜん美人じゃない。ほのかはわたしよりウエストが三センチも太いんだよ」

「何を・・・、佳代のアンポンタン」

「苦労知らず」
  
 五分ほど誹謗合戦は続いた。お互いに悪意はないとわかっているので、笑いながら適当にストレスをぶつけ合うような感じで楽しかった。

 いいたいことをいいあったあと、再び食材が目に入る。食べ物のことをすっかり忘れてしまっていた。一つに集中するとまわりを見失う癖は未だに健在だ。

 ちなみまわりを見失うのはわたしに限ったことではない。脳は生まれながらにして不自由で一生苦しみをもたらし続ける要素をたくさん含んでいる。弱いから洗脳されたり、中毒にかかってしまったり、心を奪われたりする。まるで苦しむために作られたかのようだ。

 その一つ一つの試練に打ち勝てるか、打ち勝てないかで人生は決まる。自分を強くせねば誘惑に負け、人生を棒に振ってしまいかねない。

 自分だけで強くなれなくても、必ず支えてくれる人はいる。一人では困難なことも、二人、三人なら乗り切れる。そのための友人をたくさん作ろう。

 信頼できる友人を作る秘訣のひとつとして挙げられるのは、ありのままの自分をさらけだすことである。変に自分をアピールしようとしたり、よい自分を作ろうとすると不自然になり墓穴を掘る。

 相性もあるので、一人だめだったからといってあきらめないように。運が悪かっただけと開き直って、別の人と接していこう。必ず相手は見つかるはずだ。

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