小説『大切なもの(未定)』
作者:tetsuya()

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 半年ほどかけてひとつの小説を書き上げる。設定をいろいろ構築して、自分ならわでの世界観を出せる作品に仕上げた。

 長いようであっという間だった。作品には、どの作家が書いたものよりも強い愛情を感じる。文章が下手でも、内容がグチャグチャで読みにくくても、自分の仕上げた作品は、世界で一番の宝物だ。世に広めずにとって引き出しにしまっておきたい。宝物を永遠に胸にしまいこみたい。

 世に知られてお金を得ることイコール成功なのではない。努力して作品を完成させたことに価値がある。完成させたあとではそう思える。売れるのはただのおまけでしかない。お金という付属品ばかりにこだわって、作品への愛情がなくなれば読者に見抜かれ、買ってもらえなくなる。生計を立てるためにやっているとわかったとしても、完璧な作品であれば、お金を払う。一つの作品に根性や魂をどれだけ込められるかが勝負の鍵となる。

 努力し続けた半年間はきっと無駄にはならない。未知の世界に飛び込んでいこうとした、チャレンジ精神はきっとどこかで役に立つ。思いつきだけどやってみてよかった。感無量に包まれている。

 一見無価値に思えることを続けることで、得るものもたくさんある。拒絶していたものが一つ減らせたり、思わぬ成功をもたらす。いろいろな世界に飛び込んでみよう。
  
 小説家になるのはあまりに遠い世界に感じられて、書く意欲を失い、一週間、ひどいときには一ヶ月くらいサボることもあった。やってられるかと、データを消去しようとしたこともある。データを消して、気持ちを楽にしたかった。果てしなく遠い目標から逃げたかった。

 即効性のあることをばかりやってきていたため、じっくりやるというのをわずらわしいと感じたのかもしれない。その日暮らしの続いた佳代にとって、果てしなく遠い未来のために何かをしようというのは、辞書に存在していなかった。明日生きているのかもわからないのに、数ヶ月先、数年先を見据える余裕がなかったのだ。

 小説を通じて、細かいことをひとつひとつ達成するのもいいけど、大きなことを長い時間やるのもいいと思った。これからも自分のペースを保ちながら、小説を書き続けていこう。

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