小説『ちっぽけなバンドの物語』
作者:Dissonance★()

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「ホントに大丈夫?」
「はい!」
ここまで言われるとこれ以上は言えない。
「あ、でもチケット代500円掛かるよ?」
「分かりました」
これは払ってあげたほうがいいのかな・・
でもその友達の分まで払う余裕は龍児にはない。
「と、隣町だよ?」
「場所さえ教えてくれれば行きます!」
どうしてそこまで来たいんだろうか・・・
「じゃ、じゃあ来る?」
「はい!」
明日香は笑顔いっぱいだった。
龍児と明日香の目的のバスが来た。
バスに乗った龍児は定期券にライブハウスの名前と簡単な地図を書いた。
隣町の駅からすぐなので書き易かった。

明日香は龍児の前に座っている。
駅が始発のこのバスはまだ出発してなく、運転手も外に出ていてバス内は龍児と明日香だけ。
明日香が前のイスからひょこっと頭を出した。
「あの、りゅ、龍児君ってよんでいいですか?」
初めて名前を呼ばれ龍児はドキッとした。
「あ、うん、いいよ」
龍児は目を下に向けた。
明日香も恥ずかしくなったのか前を向いてイスに腰を下ろした。
気まずい1分間が経った後、バスは出発した。
明日香はいつもの場所でボタンを押し、バスを止めた。
「それじゃ、さよなら」
龍児は恥ずかしくて手をぱっと挙げた。
明日香はとことこと前へ行き、運賃箱にお金を入れ、外へ出た。
外で頭を下げる明日香に、龍児は手を振った。

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