小説『ちっぽけなバンドの物語』
作者:Dissonance★()

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2曲目が終わり、MCに入る。
ごく普通のMCだったが、観客は大盛り上がりだった。
龍児はこの状況にただ動揺し、水を飲むのも忘れた。

あの時の客とは違う。
盛り上がり方を知っている客。
パンクバンドが本当に好きな人達。

MCが終わり、雄大がアレンジのイントロを弾きだす。
その流れに乗り、雄大と海斗が歌いだす。
3曲目はリハでもやったFOUR GET ME A NOTSの「Beginning」。
龍児はこの2人の歌を聞き、本当に頼りになると、実感した。

曲は激しく切り替わっていき、スラッシュビートに入った。
激しく沸く観客達。
龍児は箱内が揺れているような錯覚を覚えた。
しばらくしてまたモッシュがあちこちで始まった。
雄大がスピーカーの上に足を乗せ、ヘドバンを始める。
龍児のドラムは自然とクラッシュを叩く回数が増えていた。

この3人はこの箱内の騒動のエンジン。
雄大が奏でる激しく優しいギター音。
海斗が奏でるファンキーなベース音。
海斗と雄大の2人の綺麗にハモるボーカル。
龍児のパワフルで正確なドラム。
全てに感情がこもっていた。

とにかく演奏が楽しくてたまらない。
最前線の客を見るともっと激しくというような手振りをしている。
龍児は手の振りを大きくし、狂ったように叩いた。

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