小説『Silent World』
作者:Red snow()

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第二夜 -静かなる街-









基地を逃げるように出た二人は郊外の廃墟に腰を下ろしていた。
「で、どういうルートで行く?」
秀介が地図を眺めながら蓮杜に尋ねた。

「そうだな・・・最短は中央通りを通って10?ほどか」
蓮杜が秀介の持っている地図を覗き込んでつぶやいた。

「中央通りなんて銃の的になりに行く様なものだよ」
秀介が少しバカにするように言い捨てた。
「とは言っても脇道も大して変わらないかもね 狭いと罠も怖いし」
秀介はそう言うと蓮杜に地図を渡し自分の装備を点検しはじめた。
「おっ見てみろ秀介」
蓮杜が地図に走る一本の線を指差して言った。
「なるほど・・・地下水道か」
二人がニヤリと顔を見合わせた。

詳しく見るとこの地下水道は目的地の廃病院前の川につながっているようだ。
「よしなら入れる場所を探そう」
先に秀介が立ち上がり後から蓮杜が続いた。

侵入は道端のマンホールから思ったより簡単に入れた。

暗闇に目を慣らすために入ったところで少し待機し目が慣れてから流れに沿って歩き出しす。

地下水道はかなり昔に作られたようで幅が3メートル高さは2メートル程で壁は石を積んで固めていた。
湿度の高い生ぬるく淀んだ空気が二人にまとわり付く。

もう2時間ほど歩いただろうか二人は互いに向かい合うようにして壁にもたれかかり休憩していた。
「あとどれくらいだ?」
蓮杜がふぅと息を吐き尋ねる。
「えーとこのペースならあと一時間半ほどかな」
秀介が左腕の腕時計を見て答える。

数分の休憩を終え二人は再び歩き出した。パシャパシャと水面を踏み抜く音だけが坑内に響く。

いつしか地下水道は古い石垣の壁からコンクリートの壁になり幅も高さも3倍近いものになった。

「あそこだ あの梯子、あれを上れば廃病院から600メートルほどの場所に出るはずだ」
そういって秀介が歩調を速めた。
「待て!」
突然、蓮杜が秀介の襟を掴んだ。
「なんだ!?」
秀介が驚いて振り返る。
「動くな!足元を見てみろ」
蓮杜が秀介の足先から30センチほど先を指差した。その先には―

「ワイヤー・・・?罠か!?」
秀介は動揺しながらもそのワイヤーを越えようとした・・・その時
「やめろ!」
蓮杜の怒声に秀介は思わず足を引っ込める。

「そのワイヤーの先をよく見てみろ」
蓮杜がしゃがんでワイヤーの先を凝視する。真似るように秀介もワイヤーの先に目を凝らした。

「なんだあれ・・・ピアノ線か・・・?」
そこには水底と同化するように薄く塗装されたピアノ線が張られていた。線の先には―地雷。

「手前はダミーだな 気をつけろ」
蓮杜が秀介の方をポンと叩いた。その瞬間、足元から湧き上がるように全身を「恐怖」が襲った。

  1歩先に『死』があった 

そう考えただけで呼吸が速くなり苦しくなった。視界が狭い。蓮杜の声が聞こえるが
もう何を言っているのか理解できなかった。

そして、苦しいと思う気持ちが頂点に達したときそれは一転して楽になった。


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