小説『Silent World』
作者:Red snow()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第三夜 -生存者-


二人が基地に戻る途中、別のルートから来た味方に出会った。
が数が少ない。10人ほどいたはずの味方は3人になっていた。
「助かった!味方だ」
赤毛の青年が安堵したように言った。
「他の奴はどこに?」
秀介が尋ねる。
「それが・・・・・・」
青年は少し戸惑い続けて答えた。
「俺は少し遅れてて・・・後から追いついてみれば味方が大勢死んでたんだ。そこでその二人を見つけた」
青年は後ろで座っている二人の少年を指差した。よく見れば一人は腕に怪我を負っているようだった。
「撃たれたのか?」
秀介が尋ねた。が怪我を負った少年は黙って首を横に振るばかりであった。
「ちょっと見せて」
そういうと秀介は少年の腕を抑えていたガーゼを持ち上げた。
「なにこれ・・・・・・切り傷?」
傷口は縦に20センチほどで傷は骨が見えるほど深い。
「なにがあったの?」
秀介は不思議に思い赤毛の青年に尋ねた。
「それが・・・・・・俺も不思議に思って聞いたんだけど答えようとしないんだ」
「そう・・・よほどの事があったみたいだね」
そういうと秀介と赤毛の青年は二人の少年に目を落とした。
「なにがあった?」
突然、蓮杜が二人の少年の前に立ち低い声で尋ねた。
しかし二人は答えようとしない。
「無駄だよ。俺も何度も聞いたんだ」
赤毛の青年が諦めたように言った。
それを聞いた蓮杜が二人の耳元で何かを優しくささやいた。
すると驚いたことに二人の少年のうちの一人が口を開いた。

「ぼ・・・僕たちは合流地点で待っていたんだ・・・もう一つの班を・・・・・・」
それは今にも消えそうな小く細い声で聞き取るのがやっとだった。彼は話を続けた。

「でも・・・・来たのは味方じゃなくて・・・・」
「なんだ?敵の部隊か?」
赤毛の青年が尋ねる。
が少年は大きく首を振り今までよりも大きな震える声で叫んだ。
「ちがう!悪魔だ!悪魔が来たんだよ!!」
少年の目から涙が流れる。
「悪魔?どんな姿をしていた?数は?なにがあった?」
蓮杜が冷たく尋ねる。
「さ、最初に一番前を歩いていた班長の頭が吹き飛んだ・・・・その後は無線機を背負った奴・・・・
あとは分からない・・・それだけで班は散り散りになって・・・・いろんな場所から悲鳴が聞こえて・・・」
少年は少しづつ冷静さを取り戻していき細々と詳細を話していった。
「君はなんでやられなかったの?」
秀介が尋ねた。
「僕は・・・・・なにかにつまずいて・・・それで道端の穴に落ちたんだ」

「他に見たものは?」
蓮杜が尋ねる。
少年は少し考えた後何かを思い出したように言った。
「黒い・・・そうだ黒い羽根が見えた」
蓮杜と秀介はお互いに顔を見合わせた。
魔女だ。二人はそう確信した。

「この道を歩いていけば目的の病院が見えてくるから、そこで手当てしてあげなよ。もう敵は倒したから」
秀介が赤毛の青年に伝えた。
青年は蓮杜と秀介に礼を言い怪我をした少年を支えながら再び歩き出した。



蓮杜と秀介は三人と別れ再び基地に向かって歩き出した。
「さっきの話どう思う?」
秀介が蓮杜に尋ねた。
「魔女だろうな」
蓮杜が答えた。
「まぁどちらにしても一度戻ろう」
秀介がそういうと
「だな。病院に増援を送ってもらおう」
と蓮杜が答えた。

二人は再び地下水道を通り、基地に戻った。

-7-
Copyright ©Red snow All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える