第三夜 -消えた小隊-
-10時間後-
「休んでいるところ申し訳ないが任務だ」
老兵が不機嫌そうな面で言った。
「どういった用件で?」
秀介が疲れた様子で尋ねる。
「さっきの話に戻るんだがね、あれから制圧目的に一個中隊を送り込んだんだ。あそこは重要な拠点だからね」
老兵が中隊の構成表を見ながら首をかしげた。
「中隊になにか?」
秀介が尋ねる。
「一個小隊が消えた」
老兵が不機嫌そうに答える。
「消えたとは?戦闘ですか?」
秀介は真面目な顔になって尋ねた。
「わからん、それを調べてきてくれ。もし敵を見たら撃ってかまわん」
「味方の規模は?」
蓮杜が言った。
「主軸にライフル小隊3つ、戦闘支援に迫撃砲小隊1つ。一個小隊あたり50人ほどだ」
老兵が機械のように答える。
「出発は30分後。あと君たちに新しい装備を用意してあるからここを出るとき受け取りたまえ」
老兵は椅子に深く腰掛けコーヒーをすすりながら言った。
「了解」
二人はそれだけ言って部屋を出た。
部屋を出るときに手渡された装備は小型の無線機だった。
今回は迫撃砲小隊の支援があるので、おおむね目標指示と着弾観測の役割だろう。
外は夜だった。緋色の月が乾いた街を照らし出す。
「綺麗な夜だね」
秀介が言った。
しかし蓮杜は無言で歩き続けた。それはまるでこれから起こる事が全て分かっていたかのようだった。