小説『とある世界の主人公達(ヒーローズ)』
作者:くろにゃー()

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「おい、そこの電撃B大丈夫か?」

「……は?と御坂は咄嗟に言葉を放ちます」

「お前だよ、電撃2」

「は、はい――と御坂は突然の指名に動揺を隠しきれず返事をします」

「だ・か・ら。大丈夫なのか?って聞いてんの。」

「え、えっと……戦闘中怪我したことくらいなので問題ないです。とみさかは平静を失いながも何とか身体の状況を打ち明けます」

「あ……、一応見せてみろ。」

と言って御坂クローンに近づく、

御坂クローンは何やら萎縮してしまったらしく、無言で怪我した足を差し出した。


「あ……こりゃひでぇわ。病院に連絡だな。」




「ああ。その必要は無いと思うよ。」






その声で振り返ると、一人の男が居た。

 長く髪を切っていないのか、偉く伸び切った髪と割と細い体系の茶髪の髪、真っ白なTシャツに半袖のジーパンと何とも飾りげのない少年が、すべて見ていたかの様な風貌でこちらに声を掛けてきた。

「誰だよ。手前は」

「俺? 俺は市元非波。 」

 僕は咄嗟に肩に居る夢雨ちゃんを見る。

 しかし夢雨ちゃんはただ、不審に抱いている。……この顔を見る限り、この人物は、夢雨ちゃんですら知らない、モブ的なキャラクターだってことと、僕の義妹はどんな表情でも可愛いって事が分かる。 

「今日は……意外と早く仕事が終わりそうで良かったですね。とミサカは婉曲に嫌みを言います」

「毎度毎度助けてやってんのに、味気がないっつーか、遣り甲斐がないつーか、たまには感謝の意でも示してみろよ。」

「別に感謝してない訳ではありません。只これが私達ですから。とミサカは二万人のシスターズの心情を代弁します。」

「二万人? シスターズ?」

 夜春は聞いた事のない単語に対して首を傾ける。

「それにしても、よくコイツに勝てたな、普通の奴じゃあ触れねーよ。どんなトリックを使ったんだ?」

 非波が突然視線を変え、喋りかけてくる。

 夜春は、この会話劇の中で、市元非波という人物が、どうしても普通とは違う様な印象を持った。

「別に。ただ木原神拳を使っただけだよ」

「何だよ木原神拳って。大体最初の攻撃は拳じゃなかっただろ。」
 
 非波は深くまで追及したが、夜春はこの世界での一方通行は最強であり続けなければならないと考え、一切教えなかった。見猿聞か猿言わ猿。少年が、他に漏らすという可能性を踏まえての行動だった。

「それより何で病院連れて行かなくて良いんだよ。お前はホイミでも唱えれるのか?」

「全く。何でこの学園都市に住んでいる奴が、魔法やら、呪文やら言うんだろうね。この世に魔法も呪文も存在しねえよ。とりあえず、怪我したとこ出せ、治す。」

と非波は御坂クローンの怪我をした足に触れる。

と、

一瞬で治ってしまった。


「これがお前の能力……ってわけ?」

「そうだよ。物を変える能力って感じかな。――――――そんな事はどうでもいいか。問題はアイツか」

 そう視線を向けられたのはさっき倒して、すぐ近くで失神している一方通行だ。

「殺すか」

 非波はそう冷淡に呟いた。 生まれた環境のせいか、表情は黒く、底が見えない様な悪意が顔に映っていた。

「アホ。僕が倒したんだ。処理の方は僕に任せろ。」

「チッ!」

 非波は露骨に舌打ちをする。彼が何故苛立っているのか。

 それは多分。一方通行の殺戮を何度か見てきているからだと思われる。一方的な虐殺が、非波には許せない、一方的な強さが許せない。

 それは過去に弱い立場の苦しみを嫌なほど体験してきた彼だからこそ、行き過ぎた正義感を持つようになったんだろう。

 しかし、冗談抜きの冷酷な表情で殺すと言っている非波に何の躊躇いもなしに対応している夜春も、それはそれで、異常なのだが。

「あ……あと電撃2号。おまえも来い。話がある。」

 そう言って、夜春は邪魔な非波を手で払い、一方通行に近づいた。


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