小説『ZOAR』
作者:ララ()

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  「まずい、これ…………どうしよ………」
 
  何もない辺りを見渡して、夏は途方に呉れていた。

  そっと丘の下を除くと、さまざまな工場から

  大量の黒煙が立ちのぼっていた。

  空では、相変わらず無数の偵察機が先回している。









  「と、とにかく町の方へ降りて、香を探さないと……………」

  足の踏み場もないような鉄の山の隙間を、

  駆けるように下っていく。

  しかし道らしき道は、一向に開けてこなかった。

  ラムの中で必死に呼吸を荒げる。

  「香っ、香ぃ!!! あっ――――――――」










  ふいに何かに足をとられ、夏は大きく躓いた。

  あたりに鉄くずが散乱する、鋭い音が響く。

  「ったぁ……………」

  (しまった―――――足挫いたかな……………)

  慌てて夏は、痛む右足をさする。
 
  足全体にもの凄い激痛。

  「あ、歩けるかな――――――」

  必死に痛みに耐えながら、地面から突き出ている鉄パイプを支えに立ち上がった。

  その瞬間だった―――――――……………









  『―――――ターゲット発見。

  DNA、指紋全てにおいて、奴を標的“宮浪 香夏”と確認しました。

  襲撃を開始します』










  上空から、そんな機械ボイスが聞こえてきた。

  「え……あ、あたし…………? 」

  突然の声に頭が真っ白になりながら

  ゆっくりと上空を見上げる。

  「――――――!!!!!!!! しまっ………………」

  夏の目に映ったのは、

  無数の偵察機のヘッドライトが、しっかりと自分を照らす姿だった。

  息をつく暇もなく、

  偵察機の横から銃口が飛び出す。










  (これって香の言ってた……………

  見つかったら即アウト、ド頭にミサイルぶち込まれるっていう……………)

  『殺してでも“宮浪 香夏”をとらえなさい。

  全機襲撃用意…………………! 』

  そのアナウンスで、四方八方から新たに

  何百もの偵察機がこちらへ向かってくる。

  「あ、あ、…………………そ、そんな…………………」

  無数のライトに照らされ、夏はその場にたちすくんだ。




 



  

  (こ、殺される…………助けて、香…………香ぃぃぃ!!! )

  必死に心の中で叫ぶが、現状はなにも変わらない。

  あまりの恐怖に涙さえも出なかった。

  足がわなわな震え、動くことさえ出来ない。

  喉の奥から振り絞るような声で、夏は偵察機に向かって叫んだ。

  「ち、違う……………あたしは………………

  あなたたちの追ってる…………………“宮浪 香夏”じゃない……………」
  










  しかしそんな声が偵察機まで届くわけもなく

  銃口がさらに黒光りするだけだった。

  『全機………………砲撃開始!!!!!!!!! 』

  「いや、だ、め―――――――」










  激しい雨の様な銃弾が、夏の目の前に落ちてきた。

  空が真っ黒に染まってしまうほどの偵察機から

  とめどなく銃弾が飛び出す。

  『“宮浪 香夏”、なんとしてでも捕らえなさい! 』

  耳が吹き飛びそうな轟音が飛び交う。

  動けないまま、固く目を閉じる夏。

  「もう…………だ、め―――――――」  









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