15, 未来での見方
「香夏、伏せろ!!!! 」
突然の声に、夏は全身をびくつかせた。
「…………!!!!??? 」
けれど、その声が誰かなんて確かめる暇もなく、
夏は金縛りが溶けたかのように反射的に身を屈める。
とたんに、地面へたたきつけるような銃弾の雨が
ピタリと止んだ。
同時に機械の音すら聞こえない、静けさが襲ってきた。
「…………香夏、目ぇ開けて」
「…………っ…………」
誰の声とも知れない声に、導かれるように
夏は、固く閉じていた目をうっすら開ける。
いったい、何が起こってるの―――
あからさまに怯えている夏を見て、心配そうな声がする。
「香夏? どうしたんだよ、あんなとこで固まって……………」
「あ、あなた……誰…………? 」
目の前にいたのは、もちろん夏の知らない誰か。
茶色の髪をした背の高い男の人………
香夏って呼んでるのは、たぶん香のことだろう。
じゃあ、知り合い………?
いや、あたしのいた世界でも、こんな人見たことない。
目を点にして見つめる夏を見て
男の人は首をかしげた。
「え……誰って………オレだよ。蒼河 黎弥。
そういや香夏、なんか変じゃないか?? 」
「いや、あの………あたしは……………」
「あ、もしかして縮んだ? 」
「いや、だから………あの……………」
しどろもどろになりながら、夏は上手く説明できない。
どう説明したらいいのか分からず
いろんな事が頭を駆け巡る。
「あ、もう限界かな…………香夏、走るよ! 」
ふと上空を見上げて、ぼそりとつぶやいた。
「へっ!? ちょ、あの……いったい……」
「どうしたの? 」
「あ、あ、あの…………な、何が限界なんですか!? 」
「何って………このシェルターは君が開発したんじゃないか」
「シェ、シェルター? 」
夏も上を見上げると、まるであたしたちを取り囲むように
透明のバリアーが張られていた。
「ひゃ……あれ何!? 」
「え? げ、幻覚シェルターじゃないか。
相手の攻撃を防ぐ上に、幻覚で別の映像を映し出し相手を霍乱させる
っていう…………覚えてない? 」
「し、知らない……です」
「何か様子が変だね、香夏。
話は後で聞くから、とにかくもう幻覚は持たない。
偵察機に気付かれるのも時間の問題だ。
行くぞ、走るんだ香夏! 」
それだけ言うと、黎弥と名乗る男の人は夏の腕をとった。
「わっ……………!! 」
「走れ!!! 」
そして幻覚シェルターから一気に飛び出ると
2人は逆方向へ一斉に駆け出した。