1, 設計図
――――――時は 西暦:2009年。
「 将来の夢
5-A 宮浪 香夏
あたしは大きくなったら科学者になりたいです。
そしてかしこいロボットを作ります。
ロボットと人間が仲良く暮らせる、素敵な社会にしたいです。
戦争が起こらない、平和で安全な町になったらいいなぁと思います」
夕闇に落ちる放課後の教室で、香夏は一人机に向かっていた。
誰もいない教室で、宿題の作文を仕上げるためだ。
とは言っても、もう書きあがっているのだから、書く内容に悩んでいるわけではない。
しかし香夏は、書く手を休めることなく動かしていた。
三角定規やコンパスを巧みに使い、何かを必死に書いている。
「人体から取り出した生命エネルギーを使って………
この人体回路をこっちにつなげば…………」
そう、香夏の書いているのは設計図。
小学5年生が書くとは思えないような正確な設計図だ。
左側には人間、右側にはそっくりのロボットが描かれ、
その二つが無数の回路で繋がれてある。
ロボットの上には?ZOAR?と記されていた。
「いつか完成してみせるわ。これを使って世界を平和にしてみせるの! 」
そうつぶやきながら、香夏は必死に書き続けた。
これは香夏の楽しみであり、また夢でもある。
幼いころからさまざまな本を読み、ありったけの科学知識をつけた香夏だからこそ
大人顔負けのこんな設計図が書けるのだ。
すると
「それ、なに? 」
「!!?? 」
突然、誰もいないはずの教室のどこからか、声が聞こえてきた。
「誰!? 」
反射的に、香夏は設計図を作文の下へ押し込む。
そして何食わぬ顔で、声のするほうを見た。