16, 理解者
「え? か、彼氏………って…………えぇぇぇぇ!! 」
夏はそれを聞いて、頬を真っ赤に染めた。
目の前の黎弥がまともに見られない。
まさか、今まで“彼氏”を作ったことがなくて
ましてや“男子”なんて、興味もなかった自分に
未来じゃ“彼氏”がいるなんて…………
「か、か、彼………氏………ですか………」
「そうだよ♪改めてよろしく、未来で香夏の彼――――――」
黎弥がそう言って、手を差し出そうとした瞬間。
「彼氏? フン、笑わせないでよ。
あたしがいつ、あんたなんかのこと好きになったの!!? 」
聞き覚えのある、厳しい声が
洞窟の入り口辺りから聞こえてきた。
「おっ? 香夏! 」
「えっ!!? 」
そこにいたのは、獣の様な冷たい目でじっとこちらを睨みながら
息を弾ませてやってくる香の姿だった。
香を見て、どっと安心感であふれる夏は
その場にぺたんと座り込む。
香を見て、黎弥は笑顔で手をふる。
「香夏〜! この香夏ちゃんから、いろいろと聞いたよ」
「うるさい。あたしは香。こいつは夏。
二度と“ちゃん”だなんて呼ぶな!! 」
「香夏? 怒ってるの? 久しぶりだってのに」
「そうよっ! あたしはアンタが嫌いなの! 」
そんな2人のおかしな会話を聞いていた夏は
香の白衣を引っ張って、話しかけた。
「香、なに怒ってるの? 彼氏なんでしょ? 」
「馬鹿っ! あんたまで何言ってるの!?
違うっていってるじゃない!! こんな馬鹿! 」
「おいおい、そりゃあんまりだぜ」
苦笑いしながら、頭をかく黎弥。
しかし黎弥を見ようともせずに、香はぷいっとそっぽを向いた。
「へんな香。
彼氏の存在を否定するなんて」
「黙れ夏! あたしに彼氏なんていない!! 」
「はいはい」
「嘘じゃない!! 」
「分かったって」
けど隣で黎弥は、しれっと言う。
「いや、お前はほんとにオレの彼女だよ。
だってオレ、お前と―――――」
「あぁぁぁぁ!!! うるさい!!!!
そもそもなんでアンタがここにいるの!?
あたしは過去へ行ったり、?ZOAR?の製作で忙しいから
来るなっていってたじゃん!!
ほんとうざいやつ、なんなのよいったい!! 」
「いやだから、それでもお前に会うためにだな――――」
「黙れっ!!! 」
(やっぱり香に「男」は似合わないよ……)
2人の片隅で夏は微笑した。