小説『ZOAR』
作者:ララ()

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18, 1号機





  香は、白衣のポケットから小さな鍵を取り出す。

  「それは……………? 」

  香は一番奥に置いてあった、冷凍保存用のカプセルの前へ歩いていった。

  長細いそのカプセルに小さな鍵穴があり

  そこへ香は鍵を差し込む。

  カチャッという音を立てて、カプセルはゆっくり口を開けた。









  「香、これは…………」
  
  中からむっくり起き上がったのは、人間の姿をした―――――ZOARだった。

  真っ黒な短髪をした男。

  固く目を閉ざしている。

  その男の顔も身体も瞳も、全て人間にしか見えないのだが

  夏には何となくそう感じさせた。

  「まさか、香。これって……………」

  「そう。あたしの作った、<ZOAR>第1号機。

  生命エネルギーは、見ず知らずの一般人から提供してもらったのさ。
 
  これはまだ、完成形とは程遠い。」

  







  
  (確かあたしの設計した?ZOAR?も人体がベース。

  でも、ここまで正確に作れるなんて…………自分なのに信じられない! )

  目の前の?ZOAR?は、何もかも人間そっくりだ。

  この人の身体の中に、無数の回路が埋め込まれているなんて

  いったい誰が思うだろう。

  香はカプセルの側面にある、赤いボタンを押した。

  「?ZOAR?1号機、目覚めよ―――――」










  『香夏様の、おおせのままに………』

  ?ZOAR?1号機と呼ばれたその男は、ゆっくりと起き上がり

  目を見開いてそう言った。

  「すごい…………これが、あたしの作った?ZOAR?なの………」

  夏はその光景に釘付けになった。

  見慣れているのか、黎弥はただ笑って見ているだけだ。

  「まぁね。ためしに作ってみたんだけど

  こいつ、忠誠心が妙に強い上に、感情が薄い。

  これじゃ、ド素人の人間にまで正体がばれるから、こいつは失敗作」










  
  「つ、使わないで壊しちゃうの? 」

  「いや、戦闘機はかなり積んであるから、捨てるのは惜しい。

  何かの役に立てるかも知れないだろ? 」

  「そっか………他にもあるの? 」

  「後10体ほど作ったんだが、どれも完成には程遠い。

  2号機はエネルギーが足りなくて、3号機は知能レベルが低すぎて……

  4号機は戦闘装備が万全でなくて……………」

  「な、なるほど………」









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