「でね、この1号機なんだけど」
香はそう言って、無表情のまま起き上がっている1号機を指差した。
表情がなく、冷ややかな目つきでどこか一点を見つめている。
夏は恐る恐る、1号機へと近づいた。
「この……?ZOAR?が、どうかしたの? 」
「決壊品だが、こいつの忠誠心は案外役に立つんだ。
?ZOAR?の動力源の調達には、欠かせない人材じゃないかな? 」
「その動力源の調達、オレも手伝うよ。
具体的にどうやればいいわけ? 」
じっと聞いていた黎弥は、1号機の頭を撫でてそう言った。
「う〜ん、簡単なことだよ。
人間を連れてきて、そいつの生命エネルギーを吸い取る」
「ちょ……そんな恐ろしいこと、ほんとにやるわけじゃないでしょうね!? 」
夏は驚いて立ち上がった。
「何が恐ろしいことよ。この設計したのは、アンタじゃない!?
それにさっきも言ったけど
何もその人間が死ぬまで吸い取るわけじゃないんだ。
上手くやれば、死ぬことなんてないさ」
「でも…………そんなのあんまりだよ」
「だからアンタはぬるいんだ。
“人間に復讐する”あたしはそう言ってるだろう?
あたしにとって人間は、敵なんだよ!
アンタは敵に情けをかけるのか!!?
人間の見方をするなら、夏、アンタも敵だ」
香は、険しい顔をして
腰に忍ばせていた、歪な形の拳銃を取り出した。
「香…………―――」
「おい香! 落ち着け!! 」
香が夏の額に拳銃を突きつけるのを見て
黎弥が慌てて止めに入る。
「香、血迷ったか! いくら人を殺してもいいと言っても
お前が拳銃を向けているのは、自分なんだぞ!? 」
黎弥は銃口をぐっと握った。
その声で香ははっと我に返り、慌てて拳銃をしまう。
「香…………―――」
ただそう言うことしかできない夏は
香へ手を差し伸べようとする。
「なぁ、夏―――――」
それより先に、俯いたままの香はつぶやいた。
「え、何? 」
「アンタは、あたしだよな―――――」
「ずっと香がそう言ってたじゃない」
「夏、アンタは、どんなことがあっても、あたしの見方だよな」
「香? 」
「夏は、あたしの見方だよな? 」
「そうだよ? あたりまえじゃない」
それを聞いて、下を向いたままの香はすこし微笑んだ。
「そうか…………なら、いい」