19, 重罪取締り班
「μ 様、宮波 香夏の位置が割れました」
『いいか、今度こそ捕まえるのだ!
我らの名誉にかけてでも、重罪犯宮波 香夏を逃すな!! 』
「「了解!! 」」
ここは国家重犯罪取締り班の総本部である。
μ (ミュー)と呼ばれた男は、白髪の長髪をポニーテールにした
背の低い総司令官だ。
長い杖を持っていて、身体に吸い付くような服を着ている。
『3番隊は突撃準備にかかれ!
1、2番隊は戦力の充実に全力を尽くすんだ! 』
μ は高い台座の上からそう命じる。
するとμ の後ろから、突然美女が現れた。
μ と同じような服装をしているが、背は高く
長い髪を背中にたらしている。
副司令官として、μ の側近を担う彼女の名は、τ (タウ)。
『μ 様、宮波 香夏の位地がつかめたのですか? 』
『あぁ、抜かりはない。
今すぐにでも突撃させるつもりだ』
『そのことについてご報告があります』
『なんだ、τ 』
τ はμ の耳元で、小さくつぶやいた。
『まだ未確認の情報ですが、ここには
宮波 香夏と全く同じDNAや指紋をもつ、もうひとりの宮波 香夏が
存在しているようです』
『何? どういうことなんだ?? 』
『詳しいことは全く分かっておりません。
しかしその人物と、宮波 香夏が接触している可能性は十分考えられます。
要注意人物に加えておいたほうが宜しいかと………』
『うむ』
『ご注意くださいませ』
『τ。おぬし、3番隊の指揮をとれ』
『しかしμ 様の護衛のほうは……』
『かまわぬ。やれ』
『了解いたしました』
無表情のまま、τ は礼儀正しくお辞儀をして
3番隊とよばれる部隊のほうへ歩いていった。
残ったμ は、高台から下を見下ろす。
μ の鋭い目線の先にあったのは、等身大の香の3次元ホログラムだった。
その周辺にはありったけの情報が書き込まれている。
DENから色彩から、指紋にいたるまで
香のありとあらゆる情報がそこにはあった。
そしてもちろんそこには
香の正体もはっきりと書かれてあったのだ。