23, 薔薇
「えっ?? 」
香の叫ぶ声が聞こえたかと思うと、“人”に変化があった。
まるで魔法にでもかかったように
“人”の身体から、フワリと何かが浮かび上がったのだ。
たとえるなら、それはまるで
真っ赤な薔薇。
しかしその薔薇はひどくしおれており
深紅の輝きは放っていない。
浅黒い、血のような色をした薔薇だ。
“人”の体内から浮かび上がってきた、その薔薇らしき「何か」は
香に導かれるように、さらに上へと浮かんでくる。
優しく受け止めた香は、それをじっと見つめた。
香の手の中の薔薇は、まるでそれに呼応するように
赤い花びらを命一杯開く。
それを見て香は、なぜか満足そうに微笑んだ。
何が起こっているのか、全くわからない夏は
香のほうへ少し近づく。
「な、何をしたの………………?
それは、いったい何なの?? 」
香は、やっと夏たちの方を振りかえった。
「これは、生命エネルギーを薔薇状に形状変化させたもの。
形は薔薇だけど、本当はこの人間の生命エネルギーさ。
これが一体の?ZOAR?の心臓部を担うんだ。
ゆえにあたしは、これを『マインド・ローズ』と呼ぶ」
「マ、マインド・ローズ………」
「こ、これが……生命エネルギー…………なのか? 」
夏たちは、ゆっくりと香のほうへ歩み寄った。
「そう。
それであたしがこのエネルギーを、一気に凝縮させるの。
直径0,02?の?ZOAR?核細胞にね」
「ま、まじかよ!? 」
「ば、薔薇を細胞に変えることが出来るんだ……」
「それで出来る?ZOAR?核細胞を、適当な人体に埋め込む!
後は、その核細胞が
その人間をコントロールして、人間の身体を強化させるんだ」
「でもさ、それじゃベースは人間……ってこと…………なのかな?
え、あれ? あたしの設計したのは………んん?? 」
これにはさすがの夏も、頭がこんがらがってきた。
その隣で、黎弥はもっと頭を抱え込む。
「あぁぁ! もうオレ意味わかんねぇ!! 」
「あんたら頭がパニックになってるみたいだね。
無理もないか、この構造はかなり複雑に入り組んでるからな。
だけどもう時間がない。
さっそく?ZOAR?のエネルギー採取、及び製造に移るぞ!!! 」
「ちょ、ちょっと、まってよ! 」
「もうチンプンカンプンだ…………」
そう言った香は、マインド・ローズを握り閉めた。