25, 矛盾したこと
「見落としてるって、香の言葉が矛盾してるってこと? 」
「はい、何となくなんですが
あたしの時代にいるときから、香の話にはなにか引っかかるところがあって……」
夏の声はだんだんと小さくなる。
しかし攻め立てる様子もなく、黎弥は優しく聞いた。
「君にこんなこというのは変だと思うけど
香はそそっかしい奴だからね
慌てて言うことが間違ってたりするのかもよ? 」
「で、でも………」
「心配しすぎじゃない?
何が気になるのか、オレにちょっと話してみてよ? 」
黎弥の笑顔に押し負けて、夏はゆっくり口を開いた。
「香は、既に何体もの?ZOAR?を作っているでしょう?
なぜか、あたしの設計図とはちょっと構造が違う奴を。
もう完成形も出来かけてるんだから
あたしだって、あたしの設計図だって必要ないはずです。
なのにどうして………」
黎弥は少し考え込んだ後
「確かに今の香に、夏ちゃんの設計図が必要だとは思えない。
けど、夏ちゃん自身はどうだろう?
きっと香にも、何か考えがあってのことだろう。
大丈夫、自分を信じなくて誰を信じるんだい」
そう言って、夏の肩にポンっと手を置いた。
夏の顔はまだ晴れない。
「まだ、気になることがあるの? 」
「香は拓斗に……あたしの弟にトラウマがあるって言ったんです。
それもずっと気になってて……
香のトラウマってなんなんですか? 」
それを聞いて、黎弥はなぜか言葉をにごらせた。
笑顔が消え、目を泳がせている。
「黎弥さん………? 」
「夏ちゃん………それは
絶対香の前で口にするなよ、香にそれはタブーだ」
「タ、タブー? 」
「頼むから……そのことは、伏せててほしい……」
「いったい何が……」
そういいかけて、慌てて夏は自分の口を押さえた。
もう少しで真実が開けてくるような気がしたが
再び何かを質問することはなかった。
何もしゃべらなくなった夏をみて、黎弥は恐る恐る言った。
「ごめん、力になれなくて。余計に気になることが増えたね? 」
けれど夏はぼそりと、けれどしっかりとつぶやいた。
「…………もう、いいです。香のことは何も探らなくったって。
それにあたしは見方だって、香に言いましたから。
あたしは、ただ香を信じたいもの―――」