なんとも居心地悪そうに、香は愛想笑いを浮かべる。
気まずい雰囲気になるまいと
夏は母に切り出した。
「とにかく、あたしたちは大切な打合せがあるから
部屋には入ってこないでね! 拓斗も。
ご飯は廊下に置いといて」
母の横でもたれていた拓斗には、念を押すようにもう一度聞く。
「いい、拓斗。絶対きちゃダメだからね」
「分かってるよ〜! 」
「香ちゃん、ゆっくりしていってね♪ 」
母のなんとも能天気な声。
「………………あぁ……………はい」
香も何とか作った笑みで適等に返した。
「じゃ、いこうよ香」
「ああ」
二人はキッチンを後にして、二階の部屋へ向かう。
母と拓斗の声は聞こえなかった。
「ねぇ母さん、香夏姉ちゃんとあの香さんって…………」
「あら、拓ちゃんも思ったのね?
そうなのよ。二人ともそっくり! ほくろの位置も目の形も! 」
「へんなのぉ〜」
「おい、夏。さっき書いていた設計図を出せ」
部屋に入るなり、ベットで足を組み、香はそう言った。
「ちょっと、ここあたしの部屋だよ!? 」
「馬鹿、あたしの部屋でもあるんだよ」
「………………」
こう言われると何も言い返せなくなってしまう。
しかたなく夏は、鞄から設計図を取り出した。
「はい、これが?ZOAR?の設計図」
「見せろ」
そして夏の手から乱暴に奪った。
不思議そうに夏は、設計図を覗き込みながら聞いた。
「そんなのが、未来で本当に必要なの? 」
「あたりまえだ!! 」
「だって、それが正しいのかどうかも、今のあたしじゃ分からないんだよ?
もしかしたら…………いや、きっと間違ってるもん! 」
「ばぁーか。自分の書いた設計図を、自分が正しいって言ってるんだから
正しいに決まってるだろ?
まぁこんな細かい設計図が書ける奴なんて、大人でもいないしな。
小5の自分が書いたにしては上出来だ」
「香って…………まさか、ナルシストか何か? ……………」
あまりのほめ様に、ついつい自分ながらにも
疑ってしまう夏。
しかし香は設計図から目を上げることなく、言った。
「じゃぁ、夏もナルシストってことじゃん」
「なぁっ………ち、ちが……………!!! 」
「うるせ」