小説『飛ばない寄生虫』
作者:厨房娘()

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優越感とは本来、ある適切な目的を達成するための努力の結果得られ、そういった活動を促す自助的な感情ではないか思う。いくら努力しても結果にならないのは、自己分析の方法が間違っているか、自己制御の過剰や怠惰、特定の欲情に異常に囚われることが原因で自己分析ができていないのである。

だが、私がこの女に抱く優越感は、そういうものではない。私と瀬戸はなんの接点もなく、同じ目的を持って頑張っているわけでもない。瀬戸は私に対して敵意を剥きだしであるが、その理由は、私に自分の罪を咎められたことに対する憤りだけではない。瀬戸が私に対して敵意を抱いたのは私が彼女の罪を咎めたそのもっと前である。瀬戸が私に飼われることになったのは自業自得だ。その理由について、私の前で瀬戸自身があからさまにした。

瀬戸は、いわゆる妄想壁である。現実に存在しない人間を自分の想像の材料にし、勝手にその人間の人格を決定し、本来ならまともに恋愛の一つもできない、本性は凶暴な頭のおかしい猿のような男と頭の中で恋愛していたのである。そんな妄想女はその男を自分の人格の一部に取り入れ、私を傷つけようとしたのである。どうして瀬戸が恋愛妄想に溺れるようになったかということについては、恋愛に飢えていたということが一番簡単な結論だ。私も彼女の中学、高校と女子校にいたため、そのことが少なからず影響してのことだろうか。


私は自分が社会から爪弾きにされたような気がしている。自分という性格、人格を持っている人間はこの世では受け入れられない、いないでほしい、いない方がいいと思われている。それはあまりにも私が他の人と比べて「性愛」を避ける傾向にあるということに帰する。特に女で生まれた私にとって、そういった性分は致命傷である。そうして孤独に追いやられた私は、性愛に溺れるあまり社会生活もまともに送れない瀬戸に対して異様な優越感を抱くのである。




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