小説『飛ばない寄生虫』
作者:厨房娘()

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買い物をしに昼に都会の街へ出かけるとサラリーマンやOLたちがたくさん歩き回っている。彼らは自分がやっていること、働いていることになんの疑いや迷いも持っていないのだろう。でも、みな目はうつろ、顔は険しい。
なにが正しいかなんて考えたらいけない。人のことを思いやっている場合じゃない。私はそんな世界、くだらないし、馬鹿げていると思うけど、それが現実社会。悩んでも結局社会から逃げてどこまでも孤独に陥っていく。私と仲良くなる、私と同じような考え方をする人はみんな怒っている。その気持ちは私には痛いほど分かるが、悲しいことにそれを本人に言っても「あなたには分からないわよ」と言って終わらされるかもしれない。「分かる」といったところで、その人にとってなんの慰めにもならない。だって怒りの真の矛先は私ではないのだから。でも、私は現実を受け入れられないのではない。心の中で憤りみたいな感情はふつと時々湧いてくるが、時間が経てば消えていく。今までにすごい勢いで流れる自分の否定的な感情に逆らったことが何度もあって、今、私は疲れてしまってもうその気力が湧いてこない。

いい加減、自分が背負わされている宿命を受け入れろということだ。



自分には全くストレスがなくて、仕事のない日なんかやりたいことをやって、自分の意志に従って生きている。自分はこの社会に不適応なんだと、社会を否定しきれなくなって、ふと自暴自棄に陥ることもあるが、お金稼ぎのために仕方なく働くことができないのではなく、誰かの意志に従うことが私に許されていないといってしまえる。私はオフィス街のOLのように生きていくことができない。

パソコンの中の私のペットは、そのOLたちみたいになろうという意志が全くない。学歴や、とげとげしい性格からそのような職にありつくには十分すぎるほどの素材があるといえるのに、人との交流を極端に避けているから彼女は働くことができない。今の今まで他の女の女としての自己実現を否定して生きてきた結果なのだろう。私は人の人生を否定するのはいけないと分かりつつも、心の中で否定してしまったりするが、そんなことをその人に告げたりはしない。人に人の人生を犯す権利はないのだから。





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