小説『フェアリーテイル ローレライの支配者』
作者:キッド三世()

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第十八話 厄日だ……


カイルの帰還を祝った宴会が終わった後、俺は自宅に帰った。


「ただいま〜」


誰もいないとはわかっているがそれでも何か言ってしまうこの一言。宴会では酒ばっかで飯ちっとも食えなかったので飯食ってから爆睡しようと考えていると


「あぁ、帰ったかカイル。おかえり」


緋色のバカがひとん家に不法侵入していた。それどころか勝ってにキッチンを使い勝手に料理してらっしゃる。


「お前はひとん家でなにやっとんじゃ。とゆーかそれ全部俺の冷蔵庫に入れてた食材じゃねーか。なに勝手に使ってんだよ」


「うむ、腹を減らしてるだろうと思ってな。材料は勝手に拝借したがいいだろ?」


「いいけどせめて俺の許可とってからにしようぜ」


テーブルに座ると次々中々うまそうなメシを持ってくる。女剣士がキッチンに立つイコール爆発と思っていたのだが、こいつは例外だった。


「今失礼なこと考えてなかったか?」


「まさか、むしろ褒めてたんだぜ?」


並べられた料理を食いつくす。血もちょっと足りなかったし、ちょうどいい。


「昔にもあったな、こんな事……」


「ああ、俺が初めてS級クエストに行った時お前が俺ん家でメシ作って待ってたんだっけ」


あの時もそれなりにボロボロでだいぶ食わせてもらったんだっけ。


「そして程なく私もS級になって晴れてカイルとコンビを組めるようになってからはあまりなかったけどな。懐かしい」


「お前ってまだ家の合鍵持ってんの?」


「当たり前だろう。どうやってここに入ったと思ってるんだ」


そりゃ剣でぶった切ったり?


心の中で考えてると、ペティナイフを目の前に突きつけられた。


「今失礼なこと考えたろう?」


「イヤイヤまさか。とゆーかそれそろそろ返せ。もういらないだろ?」


子供の頃は色々あったから俺がそばにいてやらなきゃならんかったが今はもう大丈夫なはずだ。それに時々こいつは俺のベッドの中に入ってる時がある。ガキの頃はしょうがねえなですんだが、お互い色々でかくなってるのではしょうがねえですまん。


「断る。人肌が恋しい時に一緒に寝られなくなったら困る」


「俺も困るんですけど。まぁいいか。どうせ鍵返してもらってもドアとか斬ってでも入ってきそうだし」


そこまで言うとまたペティナイフを突きつけられる。


「お前は私を何だと思ってるんだ?」


「………とっても素敵な相棒です」


「よろしい」


後片付けをした後、俺はベッドに入った。エルザにはしばらく泥のように寝るから入ってきたら殺すとだけ伝えておいた。
ベッドに入って約二秒。俺は眠りについた。











……………………………














どこだ?ここは……




真っ暗な闇の中、俺が、いやガキの頃の俺が一人立っている。



「何だよここ?どこだよ?」


途方にくれていると目の前に母さんが現れた。暗闇に向かって俺に背を向けて歩いていく。


「待って!母さん!どこに行くの!母さん!」


消えて行く母さんを僕は必死で追いかけた。途中で何度も転んだが、そんな事は気にしてられなかった。


ようやく追いついた。けど母さんは黒いローブを着た連中に囲まれてる。


なんだ?あいつらは?


そう考えてるといきなりそいつは剣を換装して母さんに突き立てた。


「うわぁぁぁあああああ!!!!!」


そして僕は気を失った……













カイル……カイル……カイル!!



あぁ、この声はエルザか……何かすっげえ眠った気がする。起こしにきたのか?にしては随分切羽詰まった感じだな。まあいい、起きるか。


「くぁぁ、おはよう、エルザ」


むくりと体を起こす。それを見たエルザは顔を真っ赤にして目を逸らした。


「カ、カイル…早く服を着てくれ。目のやり場に困る」


「俺は寝る時裸なんだよ。知ってるだろう?」


壁に掛けてあるいつもの服を取るとさっと着る。しかしやな夢見たぜ。今日は厄日か?


「エルザ、俺どんくらい寝てた?」


「丸3日だ。その間に大変な事になった!すぐに出かけるぞ」


面倒そうだからヤダと言いたかったが、先日の一件があるので我慢した。


「……どこにだ?」


「悪魔の島だ!!」


あ、やっぱ今日厄日だ。










話を聞くところによると、俺が寝てる間にまたラクサスがナツにケンカふっかけたらしくラクサスを見返すべく、ナツ達はS級クエストに行ってしまったということらしい。止め役にグレイが向かったそうだが帰って来ない。恐らくミイラ取りがミイラってとこだろう。支度を整え、海岸まで出る。


「よりによって悪魔の島とは……なにかんがえてんだか。どうすんだよ。あんなとこ誰も連れてっちゃくんねえぞ」


「シルフで飛ばせんか?」


「俺一人なら出来ん事はないがお前もとなるとちょいときつい」


「ふむ。ならば奴らから調達しよう」


たまたま停泊していた海賊船を指差す。


「なるほど、あれなら強奪しても何も言われねえな」


「よし急ぐぞ。はやくあのバカ共を止めなければ」


そして俺たちは海賊共をぶっ飛ばし、ガルナ島に向かわせる事に成功した。


カイルは海賊船の物見の所に立ち、遠くを見つめている。今朝見た夢の事を考えていた。


(なんだってあんな夢見たんだ?なんかやな予感がするぜ)


その様子をエルザが心配そうに見つめているのには気づかなかった。



ガルナ島に到着し、砂浜を逆周りにそれぞれ探索する事になった。


「じゃあ見つけ次第知らせるからシルフの使い魔連れてけ」


鳥の形をした魔獣を連れさせる。何か言い淀んだ後、エルザは俺に意を決して問いかけた。


「あ、あの、カイル…何かあったのか?いつもとなんか違うぞ…」


「!な、なにかって何だよ。俺はいつも通りだぜ?ほらとっとと探すぞ」


背中を向けて走り出す。それを見たエルザはため息を一つついた。





(スマないカイル…実は聞いてしまったんだ……お前が寝言で母さんと呼ぶ声を。うっすら涙を浮かべてるお前を……)


確かカイルの両親は楽園の塔の奴隷として徴収された時殺されたと聞いた。恐らくその夢を見たんだろう。


(カイル…辛いならなぜ私に何も言わない。なぜ一人でいつも背負おうとするんだ………
私が気づいてないとでも思ってるのか?



私は………カイルにとってなんなんだ……)

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