小説『フェアリーテイル ローレライの支配者』
作者:キッド三世()

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第二十五話 ファントムロード



無惨なギルドの姿を見て、呆然とするカイル達。そこへ声がかかった


「ファントム」


後ろにはミラがいた。明らかに沈んだ表情。カイルは思わず拳を握りしめる。


「悔しいけどやられちゃったの」










上がボロボロになっているので皆地下で飲んでいた。場の空気は悲しみや怒りに包まれている。



「おっ!カイル達が帰ってきたぞ」


「おうただいま。じーさんは?」


「奥にいるよ」


喧騒の中をまっすぐ歩くカイル達。仲間達はやり返すか、我慢するかの賛否両論に別れているようだ。


「よっ、カイル。おかえり」


「ああ、ただいま。」


「ただいま戻りました」


いつも通り酒樽の上に乗るマカロフ。カイルとエルザもいつも通り振舞っているが、エルザの声は震えていた。


「じっちゃん!!酒なんか飲んでる場合じゃねえだろ!!」


「あ〜、そうじゃった!!貴様ら!!勝手にS級クエストなんぞにいきおって!!」








「「「「「…………は?………」」」」」


全く見当違いの事を言われたカイル達は愕然とする。


「おいじーさん。そうじゃなくてよ」


「めっ!めっめっ!」


腕を伸ばしてナツ達を一発ずつ殴る。


「……めっ//」


ルーシィだけはケツ……


「マスター、ダメでしょ?」


ついに限界がきたのか、エルザがつっかかる。


「マスター!!これがどういう事態かわかっておられるのですか!?」


「まぁまぁ、落ち着きなさいよ。騒ぐ事でもなかろうに」


「おいおい、じーさん。気持ちはわからんではないが、呑気過ぎやしないか?」


カイルは呆れる半分、納得半分の顔をしてマカロフに問う。ルーシィは何もわかってない様子でキョロキョロしていた。


「ファントムだぁ?あんなばかたれどもにはこれが限界じゃ。誰もいねえギルド狙って何がたのしいのやら」


「誰もいない?」


「襲撃されたのは夜らしいのよ」


「怪我人はいなかったのか……不幸中の幸いだな」


……引っかかるな………ギルドの規定を破ってまで、しかもファントムクラスの大ギルドがやったことがこの程度?



「不意打ちしかできんような奴らに目くじら立てる必要はねえ。放っておけ」


納得の行かないナツはまだ文句を言ってる。ナツを怒る際、またルーシィのケツを叩く。


なんでケツ?


「この話はここまでじゃ、上が治るまでしばらく受注はここでやる。カイル、あとは任せた。漏れそうじゃ」


トイレへとトコトコ走っていくマカロフ。ナツはまだ憤懣やる方ないといった感じだが、仕方ないだろう。


「何で平気なんだよ……ジッちゃん」


「平気なわけねーだろ、ナツ。だがギルド間の抗争は禁止されてる。」


「先にやってきたのはあいつらじゃねえか!!」


「後先の問題じゃねーの。せっかく我慢してるじーさんの気持ちを裏切るな。今日はもう寝ちまおう。各々気をつけろ。いいな」


「………マスターがそうお考えなのなら仕方ないな」


まだ納得はいってない様子だが一応頷くエルザ。そこで俺たちは解散になった。





といってもある家でまた集合になったのだが……








「これってさ、普通に不法侵入だよな。エルザに散々やるなって言ってたこと俺がやるってのは罪悪感ぱねえんだけど」


「大丈夫だろ?」


「あい!」


「これで一回は不法侵入しても文句は言われないな」


おい、最後の何だ。と思ってると部屋の主が帰ってくる。



「フェアリーテイルは………」






「おかえりーー」「いい部屋だな」「すまんな」



「さいこーーーー!!!!???」


まあ当然の如く怒るルーシィ。事情を説明し、一応納得してくれた。


「お前も年頃の娘だしな、だいたいカイルとふたりきりでお泊まりなんて私がゆるさゴホン!!!気が引けるのでな、同席する事にしたんだ。」


「おい、とちゅう本音が出てたぞ」


「気にするなグレイ、気にしたら負けだぞ」


諸々の事情込みでお泊り会が開かれた。各々部屋を物色している。


「ガリガリ」


「つめとぐな!!ネコ科動物!!」


「何だニコラ!その食い物!俺にもくれ!!」


「エルザーー。見てーーエロい下着ーーー」


「す、凄いな……こんなのをつけるのか…か、カイルはどういうのが好み何だ?」


「別に下着にこだわりない。大事なのは中身だろ?」


「………清々しいほどひとんちエンジョイしてるわね」


なんかすまん。








「それにしてもお前たち…汗臭いな…」


エルザが急に失礼な事を言い出す。


「同じ部屋で寝るんだ。風呂くらい入れ」


「やーだよ面倒くせぇー」


「俺は眠ぃんだよー…」


「誰がクサイだとこの野郎」



「仕方ないな…」

そう呟き、エルザはグレイとナツとカイルの肩を自分に引き寄せる。


「昔みたいに一緒に入ってやってもいいが?」

「「…」」

「アンタらどんな関係よー!」


…ツッコミがいて助かった。
ありがとうルーシィ…。










「おーいナツ!次入れば?」

「ぐー」


ルーシィがナツに入るように言うが、ぐっすり寝てしまっている。


「…グレイは?」

「んー」


グレイは椅子に座り、何かを読んでいる。



「…じゃあカイルは?」

二人はまだ入らないようなので、ルーシィはソファーで寛ぐカイルに声をかける。


「んー。じゃあ俺から入るか。エルザ、ルーシィ、覗いたら殺す」


そう言うと、浴室に消えていった。




「ふぅ。…それにしても良い湯だったなー」

タオルを巻いただけの格好でベッドに座っているエルザ。カイルに至っては上半身裸で寝転がっている。

「エルザ…皆ホント寛ぎすぎ…」


「おっとこれは失礼」


そう言ってエルザは換装でパジャマに着替える。
ハートの十字架が描かれている。

「あとカイル!!グレイになってるよ!!ちゃんと服きて!!」


「えー、俺って寝るとき何も着ない人なんだけど」


「お黙り!!家主のいう事聞きなさい!!」


しょうがねえな、と一言言うと、浴衣に換装する。東洋の着物で動きやすくて気に入っている。





「…で、例のファントムって何で急に襲ってきたのかな?」


「さぁな…今まで小競り合いはよくあったが、こんな直接的な攻撃は初めてだ」

「…じっちゃんもビビってないでガツンッとやっちまえばいーだ」


「ナツ起きてたのか…」


いきなり会話に混ざってきたナツにビックリした。
つか、イライラしすぎだろ。


「じーさんはビビってるわけじゃねぇだろ。あれでも一応、聖十大魔導の1人だぞ」


「って何自然に読んでるわけー!?」


どうやらグレイが読んでいたのはルーシィが書いている小説だったようだ。
ルーシィは顔を真っ赤にしてグレイの手から原稿を奪い取る。


「コラー続きが気になるだろうがよー」

ん、と手を出して返すよう促すグレイ。

「だぁめ!読者第一号はレビィちゃんに決まってるんだから!」

「……ん、」

「その手はなにぃぃ!?」

ルーシィが必死に説明するが聞いていなかったのか、よこせ、とエルザが手を出す。


「ダメだって言ってるでしょー!!」











「───ところで、聖十大魔導って?」


原稿を抱えたまま、思い出したようにルーシィが質問する。


「魔法評議会議長が定めた大陸で最も優れた魔導士十人につけられた称号だ」



「へぇー凄ーい」


「ファントムのマスター・ジョゼもその一人なんだよー」





「そして、あの男もな…」



エルザが憎々しそうに言うあの男とは……ジークレイン。


カイルが一番戦いたくない人物だ。


「あ、あと俺もね」


普段は隠してる聖十の首飾りをルーシィに見せる。


「えぇええええ!!か、カイルってそんなに凄い魔導士だったの!?」


「今更何を言っているルーシィ。カイルより強いやつなんてそれこそギルダーツぐらいだろう」


「?誰それ?」


「ああ、いずれ教えてやるよ。それより今はファントムだ」


「ビビってんだよ!ファントムの奴等、数だけは多いからよぉ!」


バンッと机をナツが叩く。


「だから違ぇーだろ。マスターもミラちゃんも二つのギルドが争えばどうなるかわかってっから、闘いを避けてんだ」

「…」


「魔法界全体の秩序のために、な」


「そんなに凄いんだ…ファントムって…」


ルーシィの言葉にあんな奴等大したことねぇよ、とナツが返す。


「いや…、実際争えば潰し合いは必至。戦力は均衡している」


ファントムにはマスター・マカロフと互角の実力を持つと言われている聖十大魔導のマスター・ジョゼと、フェアリーテイルで言うS級魔導士であるエレメント4。

一番厄介なのは今回のギルド急襲の犯人と思われる、鉄の滅竜魔導士、鉄竜のガジル。


「滅竜魔導士!?ナツの他にもいたんだー!」


「…チッ」


ナツは機嫌悪そうに舌打ちをする。


「ま、俺がいるから戦力的には6:4ってトコだな。それよりナツ、そんなふくれっ面すんな」



「んぉ、」



カイルはナツの頭に手を乗せ、ぐしゃぐしゃに掻き回す。


「やめろよ、カイルーー!!」

「断る」

そう断れば、こんのぉー!とナツがやり返してきた。


「甘い」



ヒラリとかわすカイル。


「避けんなぁぁ!」



「…本当に兄弟みたいだな」

「そうね…」


エルザとルーシィが微笑ましそうに二人を見つめる。

と、


「エルザも混ざるか?」



「…!……そうだな。手加減はしないぞ!」


「ギャーやめろってエルザー!」


エルザの参戦でナツが悲鳴を上げる。




「ルーシィもグレイも、ハッピーもプルーも混ざれ!」


「えぇ!?」

「カイル、ナツ押さえてろ」

「オッケー」

「わぁぁやめろ!」

「おいグレイ、早くしろ」

「おいらもー!」

「プー」








この闘いは全員が
疲れて眠るまで続いた───…

















ーーーーーーーーーーここはカイルたち妖精の尻尾に襲撃をした魔導士ギルド"幽鬼の支配者(ファントムロード)"の本部。



「ガジガジッボリバキボリガジカジッ!!」


その机の1つで、1人の男が鉄の塊を口に運び、砕きながら食事をしていた。


「ガジル〜聞いたぜぇ〜。
妖精の尻尾に攻撃仕掛けたんだって!?
うはァ、スゲェ!!!」


どうやらこの男はガジルというらしい。
そして、どうやらこの男が妖精の尻尾襲撃事件の犯人らしい。
しかしガジルはただひたすら鉄を口に運ぶだけで何も喋らない。


「ひゃっはァ〜、あいつら今頃スゲェ、ブルーだろうなっ!!!
ザマァみろってんだ!!!」


さらに仲間の魔導士が続けた時、ガジルはおもむろにに立ち上がって、




ズドンッ!!!




「ごっ!!!」




自らの腕を伸ばして、男の顔面を殴った。
その腕も鉄で出来ているようだった。
殴られた男は壁に激突し、下を向いてから動かなくなった。



「あらら。」


「ぷっ。」


その様子を冷ややかに眺める他の魔導士たち。



「メシ食ってる時ァ話しかけんなっていつも言ってんだろ〜がよォ。
クズが!!

妖精の尻尾(ケツ)が何だってんだ。
強ェのは俺たちの方だろうがよ。」


ガジルはその男に向かって吐き捨てるように言った。


???
「火種はまかれた………見事ですよガジルさん。」


そこへまた1人、暗いギルドの奥から1人の三角の魔法帽を頭に被った男が出てきた。



「あめェよマスター………あれくらいじゃクズどもは動かねぇ。」


どうやらこの男が幽鬼の支配者の長―――マスター・ジョゼのようだ。


「だから、もう1つプレゼントを置いてきたゼ。」



「それはそれは…………ただし………間違っても"奴"は殺してはダメですよ。」



「ギヒッ!!!!」









新たな惨劇の幕が開こうとしていた……



















あとがきです。更新遅くなってすみません。いよいよ本格的に始まるファントムVSフェアリーテイル!!カイルの活躍を楽しみにしててください。ではまた次回。コメントよろしくお願いします。

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