誰にもいえない。
心を許した人にもいえない。
隠し続けていなくては
自分が崩れてしまいそうで。
泣き崩れた過去の自分
押し殺した過去の自分は
いつのまにかどこかに追いやられてしまっていて、
誰にもいわなきゃ自分はもう傷つかないですむし、
誰にもうっとうしい思いをさせないで済む、
そう思っていた。
でも心のどこかで思っていた。
「どうして自分だけが」
それがちょっとした運命の悪戯で、
そんな私が人に受け入れられて、
結局そういう悲しい思いをしているのは自分だけじゃなくて、
大袈裟にすることじゃなかった。
幼い私の存在価値は、
簡単に人の評価に左右されてしまう。
だから、自分は、意地悪な人の仕打ちに等しい人間に思えて、
それは簡単に拭えるものではなかった。
干渉されたというよりは、
覆されたというべきか。
自分の問題はすべて自分が抱え込むものだと思っていて、
いつのまにそれが当然になっていた。
だから、
自分の思考の中の問題が、人の思考に流れ込む感覚が、
ただただ新鮮だった。