小説『つぶやき』
作者:あさひ()

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誰にもいえない。

心を許した人にもいえない。

隠し続けていなくては

自分が崩れてしまいそうで。



泣き崩れた過去の自分

押し殺した過去の自分は

いつのまにかどこかに追いやられてしまっていて、

誰にもいわなきゃ自分はもう傷つかないですむし、

誰にもうっとうしい思いをさせないで済む、

そう思っていた。


でも心のどこかで思っていた。


「どうして自分だけが」



それがちょっとした運命の悪戯で、

そんな私が人に受け入れられて、

結局そういう悲しい思いをしているのは自分だけじゃなくて、

大袈裟にすることじゃなかった。

幼い私の存在価値は、

簡単に人の評価に左右されてしまう。

だから、自分は、意地悪な人の仕打ちに等しい人間に思えて、

それは簡単に拭えるものではなかった。



干渉されたというよりは、

覆されたというべきか。

自分の問題はすべて自分が抱え込むものだと思っていて、

いつのまにそれが当然になっていた。



だから、

自分の思考の中の問題が、人の思考に流れ込む感覚が、

ただただ新鮮だった。

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