小説『遮蔽』
作者:たまちゃん(たまちゃんの日常サタン事)

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過去にさかのぼる。。。

当時たま男は小学校三年生。
両親が離婚し父子家庭で育つ。

父親は病弱でよく、病院へ通っていた。
その時の主治医が千秋であった。

たま父「千秋先生、私はもう…長くないんでしょう?」

千秋「…中村さん、私も医者として…
こんな事は、言いたくはありませんが…」

たま父「言ってください…私は、もって…
あとどれくらい…生きられますか?」

千秋「もって…あと3日!」

たま父「短っ!…えっ、マジすかっ?マンスリーじゃなくて?」

千秋「中村さん、今のうちに…やり残した事があれば、
やっておきなさい!」

たま父「…あいつだけは…許せない!」
千秋「おやりなさい!」

たま父「俺が、この手で殺してやる…稲森!」

一見冷徹に見える、男の眼光の奥に湧き上がる憎悪の炎は、
内なる狂気をひき起こす誘因として…充分なものであった。

稲森コーポレーション代表取締役、稲森雄市。。。

直也の父親であった。

雄市「フフフ…これで敵は、いなくなったな…」

久志「はっ!中村の奴が刃向ってくるから悪いんすよ!」

雄市「奴の会社を軽く踏みつぶしたんだが、体まで壊すとはな!」

久志「バカなやつめ!ウハハハハッ!」

雄市「おい!タバコ買ってこい!」

久志「かしこまりぃ!」

久志は、勢いよく社長室から出ていく。

久志岩男、優作の父親である。。。



部屋の奥から…赤いルージュの女が現れた。。。

千秋「ふっ…あなたも、なかなか悪い人よね。。。」

雄市「ハハハ…君ほどではないさ…千秋。。。」
 
千秋「私は、あなたの言う通りにして来たまでだわ。。。」

たま男の父に、復讐計画を促した千秋。。。
その美貌の影に隠れていたのは、恐ろしい女の執念であった。

千秋は、稲森雄市の愛人となり、
稲森コーポレーションにスパイとして…
潜入していたのである。 

安田千秋もまた、過去に…
稲森雄市に恨みを抱く1人なのであった。。。





雨が降っていた。。。

新宿歌舞伎町の真ん中で、めった刺しにされた父親の傍らには
たま男が、立ち尽くしていた。

握り締めたちっちゃい拳には、血が滲んでいた。
ズタズタに切られた父の背中から、夜叉の刺青が睨んでいた。

「鬼になれ!」

そう言われているような気がした。

しかし、たま男は…荒れた!
酒におぼれ、かたっぱしから女を抱いた。

薬にまで手を染め、自暴自棄になっていた。
チンピラにボコボコにされ、公園で血反吐を吐いていた。

『みぃ…みぃ…』

子猫が、鳴いていた。。。

「へへっ、お前さんも…独りぼっちかいっ?」

そんなたま男を、木陰から見守る女の姿があった。

西園寺神愛は、肩を震わせて泣いていた。。。





…小学3年の夏の事であった。。。

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