- 第三章 -
〜休日の買い物〜
「おはようっ! 雄君!」
「お、 …おはよう。」
昨夜、胸のうちをさらけ出してしまった雄也は、おもいっきり照れくさくて仕方がなかった。
それにつられて、美咲まで照れくさくなり、よそよそしさとういういしさが入り混じったような雰囲気をかもし出している。
それに何やらピーンときたかのように、晃司がニヤニヤしだした。
「二人とも、なーんか変だけど、なんかあったの?」
「えっ? なっ、なんにもないよ? ねぇ、雄君。」
「あ、ああ。何もない。」
こくこくと、でもぎこちなく肯く雄也。
「ほんとかなぁ。なんか二人でうれし恥ずかしいって雰囲気だから、昨日、初めてのちゅーでもしたんじゃないの?」
「なっ、なななっ。」
顔を真っ赤に染める二人に冷ややかな声で由紀奈も一言。
「ふーん。 ちゅーしたんだ。」
「しっ、してないよ!由紀ちゃんまでなんて事言うの!?」
頭からぷしゅーと音をたてて蒸気を吹き出しそうな美咲と、
「愛ちゃんもちゅーするー♪」
などと、猛烈なアタックをかけてくる愛子をいなす雄也の3日目の朝が訪れた。
「雄君、ちゃんと朝は食べないとダメよ。」
「ああ、出来る限り食べるよ。」
美咲は昨夜決心したとおり、雄也によく話しかけた。
はたから見ていると仲むつまじいこと、この上ない。
由紀奈も晃司も驚いていた。
美咲は引っ込み思案なほうで、男の人に自分から積極的に、しかもこんなに気軽に話をする事がなかったからだ。
それに加えて今朝の姉はとても楽しそうで、幸せそうで、そう思うと二人の胸にむくむくとわき上がってくるものがある。
「咲姉と雄也さん。新婚さんみたいだね。」
「ええ。見てるほうが恥ずかしくなるぐらいのラブラブぶりね。」
「らぶらぶー!」
からかう事に掛けてはさすがに姉弟。息ぴったりだったりする。
そして、雄也と美咲のテレテレぶりが実に面白く、冷やかし混じりのからかいがエスカレートしていくのも仕方のないことだった。