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「由紀ちゃんも来てくれるよねっ? ねっ?」
白いひらひらのフリルのついたブラウスと、エンジ色に一本白のラインの入ったフレアスカート、そして春らしく薄手のうす桃色のカーディガンを羽織った美咲が、由紀奈の手を取り、哀願している。
「私は二人のデートを邪魔するほど野暮じゃありませんから。」
「そっ、そんなぁ。ほら、愛ちゃんも行くんだし、デートとかそんなんじゃないし。」
愛子もしっかりとお気に入りのワンピースに身を包んで鏡の前で入念なチェックをしている。
やはり五歳とはいえしっかりと女の子だった。
「美咲姉さん。あの見習い神父さんの何処が好きなの?」
「え゛っ!?」
いきなりの由紀奈の問に思わず固まってしまう。
「すっ、好きとかそんなんじゃ…。」
「なんとも思ってないのなら、たかが買い物へいくぐらいでそんなにうろたえたりしないでしょう?」
「いや…、だから…、あの…。」
じっと見つめてくる由紀奈の視線に、逃げ道がないと悟った美咲は正直な気持ちを話す事にした。
「あのね、好きとか嫌いっていうのはよくわからないの。 ただね、雄君を見てると 『守ってあげたい』って思うの。」
「守ってあげたい?」
「そう。 雄君はしっかりしてて、すごく頼もしく見えるけれど、時々ね、何かに必死にしがみついてるような、不安とか悲しみとかそういうものを無理やり押し込んでるような時があるの。 だから…守ってあげたいって思うの。」
「ふーん。」
由紀奈はこの姉の言う事が、なんとなくは分かるような気がする。
人は傷つき、疲れ果てた時に誰かが傍にいるだけで癒される事があるのを知っている。
ただ、美咲が『守ってあげたい』 と言った時の幸せそうな顔を見て思ってしまう。
(守ってあげる事に幸せを感じてる時点ですでに恋に落ちてると思うんだけど…。)
由紀奈はすでに重症なくせにうぶな美咲に嘆息した。
「わかったわ。 私も行ってあげる。」
「ほっ、本当!?」
「わーい、みんなでお出かけー!」
ぱっと表情を輝かせる美咲と、飛び跳ねて喜ぶ愛子。
安心したのと愛子がはしゃいでいたので、由紀奈が「なんだか面白そうだしね。」 と、ボソッとつぶやいた事には気付かなかった。 やはり晃司とはよく似た姉弟だった。