「有効ではあるが、それにもある程度の訓練が必要だ。ナイフ等の刃物は素人が振り回せば自分を傷つける事のほうが多いからな。」
「んじゃあ、どうすれば…。」
「そういう事を考えながら戦うんだ。」
と、言われても晃司にはさっぱり分からない。
頭にクエスチョンマークをうかべて雄也を見上げる晃司。
「まずは答えから言おう。」
雄也は自分の教わったそのままを言葉にしていった。
「力があろうが大人だろうが、人には鍛えられない場所がある。急所というものだ。大人と子供の体格差を考えると一番有効かつ攻撃の届きやすいのは金的だ。これは分かるな?」
「うん。」
「それら急所への攻撃というのは、さっきお前がやったように全力で打ち込む必要はない。必要なのは、速さと的確さだ。当たれば相手は倒れる。」
「うん。でも…。」
「どうやって当てるか、だろう?」
疑問を簡単に言い当てられて晃司は少し驚いた。が、次の言葉でがっくりと肩を落とす。
「そこでさっきの話に戻るんだが、どうすればいいか、それらを考えながら戦うんだ。」
「だから、それが分かんないんだって…。」
「ならヒントをやろう。さっきお前が打ち込んできたとき、俺は全てお前の体の外側へ避けたな?」
少し思い出してみて肯く。
「そこへ避ける事がわかっているなら、そこへ二撃めを入れればいい。」
「あっ。」
晃司はようやく何かに気付いた。
「自分がこうすれば相手はこう動く。その時自分はどう動けばいいのかをイメージするんだ。常に一手先、二手先を読め。そして戦いの流れにそのイメージを反映させ、相手の動きを支配することができたなら…。」
雄也は言葉を一旦切り、晃司をまっすぐに見やる。
「お前は誰よりも強くなれる。」
晃司の身体に電撃が走り抜けた。
自分が強くなれるかもという期待感が全身を駆け回っている。
そんな晃司に雄也は「ただし」と付け加えた。