小説『アナト -眠り姫のガーディアン-』
作者:那智 真司()

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頬を滑る冷たい雨のしずくに雄也は我にかえる。

(ターゲットが出てくる。)

スコープが、盲目の少女の顔を捕らえる。

(あれは…。)

思考とはまったく別に、身体が狙撃の体勢へ入っていく。


(まて、だめだ!)


ぴたりと少女の眉間に照準が合った。



(やめろっ!)



引き金を引き絞ろうとした瞬間───





一斉に飛び立った鳥の群れに、スコープの中は真っ白に覆い尽くされた。



「美咲!!」

跳ね起きた雄也は頭に鈍い重みを感じた。

(……………。)

状況が理解できず、呆然となる。

「ど、どうしたの雄君。 …怖い夢でも、見た?」

(なぜ…。)

美咲の声に反応してそちらに顔を向けはするが、返事は出来ない。

(なぜだ…。)

叫びだしたい衝動を堪えるために奥歯をきつく噛締めていたからだ。

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