小説『アナト -眠り姫のガーディアン-』
作者:那智 真司()

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 ◆◇◆

ようやく完全に目を覚ました雄也は、自分の置かれている状況に顔が真っ赤になっていくのが分かった。
美咲は雄也をずっと抱いていたのだ。

「みみみっ、美咲っ。 あ、あの、すまない。 ちょっと寝ぼけてたみたいで…。」

しどろもどろの雄也からそっと離れて椅子へ戻る。 何事もなかったように穏やかな顔の美咲。

「すっごくよく眠ってたけど、体調は良くなったかな?」

なれない体勢で、深い眠りに捉われていた雄也は、頭も重く全身をどんよりとした倦怠感に苛まされていたが、これ以上心配させる必要もなかったので「もう大丈夫」と言った。

「よかった。 なかなか起きないからちょっと心配だったの。」

「すまない。 …俺はどれぐらい眠ってたんだ?」

「もう九時を過ぎてるから、…十二時間以上かな?」

「なっ…。」

雄也は絶句した。
襲撃があると分かっていながら、その日一日をまったくの無駄にしてしまったのだから無理もない。

「途中、愛ちゃんが来て一緒にお昼寝していったけど、ぜんぜん目を覚まさないんだもの。」

雄也の内心など知らずに、美咲はくすくすと笑う。

(なんてざまだ。 一番警戒が必要な時に…。 いや、過ぎた事は仕方がない。 美咲に襲撃のある事を話して迎撃に備えなければ…。)

「雄君、喉は渇いてない? 体調が戻ったなら、お腹もすいてないかな?」

焦る雄也にのんびりとした美咲。 雄也は襲撃のある事を告げるべく、口を開きかけたその時…。

ぐううぅ〜 ───。
くうぅぅ〜 ───。

二人のお腹の虫が同時に鳴いた。

「………。」

「………。」

「………。」

「ぷっ…。」

はたと見詰め合ってた二人だったが、雄也が堪えきれずに笑い出してしまった。

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