「『眠り姫』は死んだわ。」
心から嬉しそうに洋子はくすくすと笑う。
「貴方は『眠り姫』の身代わりを求めてる。 私なら貴方を満足させてあげられるわよ?」
「断る。誰もあの人の代わりになんてなれない。」
「そうかしら? あの眼の見えないお嬢ちゃんはどうなのかしらね?」
ぴくりと掴まれた首に雄也の同様が伝わってくる。
「昨日の貴方はまるで、何かから解放されたかのように幸せそうだったわよ?」
「昨日の警告はお前か…。」
「ラブコールが届いたみたいで嬉しいわ。」
「もし、彼女を狙っているなら諦めろ。 彼女は俺が守る。 指一本触れさせる事は無い。」
「あら、お姫様を守るナイトみたいよ? 『眠り姫』の次は『盲目の姫君』ってとこかしら?」
「お前には関係ない。」
「そうね。 でも私は彼女を殺すわよ?」
洋子の首を絞める手に力が入る。
「こんなんじゃ… 足りない… わ。 そう…ね、他にも三人… いたかしら。」
雄也は頚動脈ごと握り締めた洋子を左手のみで吊り上げる。
その恐るべき凌力に洋子は陶然となった。
息苦しさと、血の回らない脳に、確かな死の影を見た洋子は、これ以上ないほどの喜びが身体を駆け巡るのを感じた。