(美咲の命があと35日しかない運命なら、その魂をあの人の為に利用させてもらうだけだ。)
大事なものを掴みきれない雄也に、『眠り姫のガーディアン』の心が彩りを増していく。
雄也は、ふらふらとまとまらない思考のままに自室へと向かった。
(美咲の死が避けられないのなら… 俺はアナトとの契約を遂行するしかない…。)
言い訳のように、自分に言い聞かせるように、雄也は自室をノックする。
──コココン、コココン。
三回連続を二回。
決めていた合図にすぐさま鍵がはずされ扉が開く。
「雄君! 怪我はない?」
言うが早いか美咲は雄也の身体をぺたぺた触り、怪我の有無を確認しだす。
「すまない。 手を少し切ったんだ。 包帯はあるかな?」
「大丈夫? 下にあるから持ってくるよ。」
雄也は部屋の中で子供たち三人が折り重なるように眠っているのを見て取ると、「皆を起こすのも悪いから俺も行く。」そう言って二人で食堂へと降りた。
今は子供達の顔をまともに見る事が出来そうにないからだ。
薬箱はすぐに使えるように机の上に出してあったので、雄也は器用に蓋を開け、ガーゼと包帯を取り出して傷口をふさぐ。
「ごめんね、私が出来るといいんだけど…。」
うつむく美咲に雄也は躊躇いながら口を開く。
「あの、さ。 美咲。」