「恋愛ってなんだ?」
「男女が互いに相手をこいしたうこと。by広辞苑」
「いや、そういうことを聞いてるんじゃなくてな…。」
雄也は軽い眩暈を覚えた。
「俺は今日、最愛の人を失ったんだぞ? そんな時にすぐさまほかの人を好きになれるなんてないだろう!?」
「わかんないじゃないか。もしかしたら目が合った途端に恋に落ちる可能性だってあるわけだし。」
何かを言おうとした雄也をさえぎりアナトは続ける。
「大体課題ってのはそれを受ける人の一番苦手なことを出す物だし、君の場合はいろいろと願いが絡み合ってるから結構複雑なんだよ? だからこの課題にどれだけ異議を唱えても変更はないから。 いいね?」
念を押すように言ってくるアナトに雄也はただ肯くことしかできない。
どちらにせよ、最愛の人の魂を握られてる以上、どんな条件でも従う以外にはないのだから。
「では、ルールその1。そうだなぁ。 ねぇ、この服がかわいいって本当に思ったら条件を軽くしてあげてもいいよ?」
「うん、すごくかわいいと思う。」
雄也は即答した。
「………。」
「………。」
見つめてくるアナトの視線に耐え切れず目をそらす。
「ルールその1。今みたいに口だけで相思相愛になったと言ってもクリア条件は満たされません。 ちゃんと心から愛し合うこと。」
案外根に持つタイプだなと胸中で舌打ちしながら、雄也はがっくりと肩を落とす。
「ルールその2。彼女は40日後には死ぬけど、それまでに天命、たとえば不慮の事故や病気以外の理由で命が失われた場合はミッションは失敗となる事。 ちなみに彼女は今、狙われてるから。」
こともなげに付け足してくる。
「それは俺のような暗殺者から40日間守りぬけってことか?」
「秘密。 誰に、どんな理由や方法で狙われてるかは言えないけど、彼女に会えばわかるから。」
さらに肩を落とす雄也に、もし天命で命が失われた場合はアナトの調査不足ということで無条件に願いを叶えてあげるからと、雄也の肩をばんばん叩きながらカラカラと笑う。
アナトなりに励ましているのだろうか?
「ルールその3。願いは一つだけ。 無限に願いを叶えてくれなんてものは却下します。 本当に心から望む願いをたった一つだけ叶えてあげる。」
「それは死んだ人間を生き返らせるということでも叶うんだろうな?」
「もちろん。それを君が本当に望むならね。」
それならば何の問題もなかった。