小説『IS インフィニット・ストラトス 〜闇“とか”を操りし者〜』
作者:黒翼()

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第十七話『一夏VSセシリア』



一週間後の月曜日。
セシリアとの対決の日であり、セシリアに最大の恐怖が刻み込まれるであろう日だ。
この日までにいろいろあった。
一夏に上級生が「教えようか?」って来たり、篠ノ之箒が篠ノ之束の妹だとばれたり、一夏に専用機が渡されることが決まったり。
一夏はこの一週間を第二世代の打鉄を纏って、性能の低い機体に慣らせておいた。
『カオス・クリスタル』製の機体と同じ感覚でやると、反応の遅さに驚くからだ。
現行するISと『カオス・クリスタル』製では性能が桁違いなのだ。

「一夏、準備はいいか?」

「俺はいいんだけど、まだ機体が来ないってどういうことだよ?」

「まあ、誰かの意図的な行動だろうな」

刹那は、直感でそう感じていた。

「や、闇影くん闇影くん闇影くんっ!」

真耶が第三アリーナ・Aピットに駆け足でやってきた。
一夏は真耶が転びそうで冷や冷やしていた。

「山田先生、落ち着いてください」

「き、来ました! 闇影くんの専用IS!」

「ようやくか。 一夏、ハロに一次移行の手伝いをさせるか?」

「時間も無いし、そうするよ。 本来なら思いっきり遊びたいところだけどな」

一夏の試合の次に、刹那による虐めが始まるからだ。

ピット搬入口が開き、そこには白いISがあった。
一夏が持つ機体と同じ白である。
一夏はつくづく『白』に好かれている。

「闇影君の専用IS『白式』です!」

「これが、俺のもう一つの、贋物の『剣』か。 だが、悪くは無いな」

一夏は白式を纏ってゲートへ向かう。

「さて、適当に遊んでくるとするよ」

「行ってらっしゃい、一夏」

「勝たなければ、俺と本気で模擬戦だ。 だから勝って来い」

「ああ」

一夏はアリーナへと飛び立った。
あ、すっかり空気と化しているけど、篠ノ之箒や織斑千冬がいる。
何にもしゃべんないけどいるからな。




 ☆




セシリアの纏う機体は、青色の機体『ブルー・ティアーズ』。
特徴的なフィン・アーマーを4枚背に従え、どこかの王族騎士のような気高さを感じさせる。
それを駆るセシリアの手には二メートルを超す長大な銃器、六七口径特殊レーザーライフル≪スターライトmk?≫が握られている。
すでに試合開始の鐘はなっているので、いつ撃って来てもおかしくない。

「刹那兄の試合もあるんだ。 遊んでる暇は無いんでとっととやるぞ」

「ふん、その台詞、二度と吐けないようにさせてあげますわ!」

セシリアはレーザーを撃つが、一夏は余裕で避ける。

「結局この程度か。 はっきり言って、お前が哀れで仕方が無い」

一夏は唯一の武装である無名の近接ブレードを展開する。
一夏がセシリアを哀れむ理由は単純で、次の刹那の無双を受けることになるからだ。

「中遠距離射撃型のわたくしに、近距離格闘装備で挑もうだなんて……笑止ですわ!」

「言ってろ。 足元をすくわれるのはお前だからな」

「! さあ、踊りなさい! わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!」

「はっ。 ワルツなんて興味ねえよ!」

一夏はセシリアの台詞を鼻で笑い、近接ブレードを握り締めて飛び出した。




 ☆




「さて、そろそろ終わらせるか」

「くっ……!」

五分後、アリーナには無傷の一夏と同じく無傷だが、満身創痍のセシリアの姿があった。
セシリアのISの装甲に傷は無いのだが、セシリア自身は疲労しているのだ。
なぜなら、一夏は装甲を無いところだけを狙って切りつけているから、装甲に何の傷も無いのだ。

「っと、ようやくか」

そして、そこでようやくその時が来た。
白式が示したのはこの文字だった。

―――フォーマットとフィッティングが終了しました。 確認ボタンを押してください。

一夏はボタンを押し、白式の装甲が変化していく。

「ま、まさか……一次移行!? あ、あなた、今まで初期設定だけの機体で戦っていたって言うの!?」

初期設定の機体に手も足も出なかったセシリアにとって、代表候補生としてのプライドはズタズタになっていた。
一夏の専用機となった白式は、滑らかな曲線とシャープなラインが特徴的で、さっきよりもスマートであった。

そして、変化した武器は先ほどよりも若干機械的で若干サイズも大きくなっている。

―――近接特化ブレード・≪雪片参型≫。

日本刀がモデルのような武器で、大太刀である。
≪雪片≫。
それはかつて織斑千冬が使っていた剣であり、≪雪片参型≫はそれが発展したものだろう。

「くははっ、はははははっ!」

一夏は笑いがこみ上げてきた。

「ど、どうかしましたの……?」

引きながらも質問するセシリア。
いきなり笑い出したら誰でもそうなるだろう。

「まさかこの俺が、あんな奴が使っていた剣を持つなんてな!」

織斑千冬の剣を一夏が、織斑の姓を捨てた一夏が使うことになり、一夏はおかしくて仕方がなかった。
そして、こんなことをするのは、篠ノ之束しか考えられないと一夏は思っていた。

「いいだろう! この剣、この俺が使ってやるよ!」

一夏は雪片を持ったことで気持ちが高ぶってきた。
失望していた姉が愛用していた武器を、自分が使うことになることは想像しなかったからだ。

「いいぜ、こいつの力、見せてやるよ! そして、俺の本気をな!」

一夏は雪片の刀身を両手で挟み、手をずらす。

カチャッ。

それに合わせるように雪片の刀身が二つに分かれる。
右手は長刀、左手は短刀になる。
一刀流と二刀流を自由自在に使い分けれることが出来るのが、この≪雪片参型≫だ。

「行くぜ!」

一夏は二本に分かれた雪片を持ち、セシリアへと迫る。
迫るレーザーを全てかわし、セシリアの隠し武器である弾道型(ミサイル)をもかわし、セシリアを斬りつけて止めを刺した。

『試合終了。 勝者―――闇影一夏』

その試合は、実に呆気ない終わりであった。




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