小説『IS インフィニット・ストラトス 〜闇“とか”を操りし者〜』
作者:黒翼()

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第十九話『二人の心境』



Side〜箒〜

私は一夏に会えて嬉しかった。
六年間、離れ離れになっていてもずっと思い続けていたのだから。
少なからず、一夏も私のことを考えてくれていると思っていた。
だが、実際は、現実は違った。
一夏は、六年振りに再会した私のことなどどうでもいいといった感じであった。
私は、それがとても悲しかった。
ずっと一途に思い続けた相手に、ようやく思いを告げれると思ったのに、なのにその相手は私のことなど意中にすらない。

それに、私と一夏の繋がりだと思っていた剣道も、以前とはまったく違う形になっていた。
一夏の剣は、剣道などではない物になっていたのだ。
ずっと竹刀一本でやっていたのに、少ししか見れなかったが、間違いなくあいつは二刀流の方がずっと巧かった。
私が勝手に思い込んでいただけなのだ。
あいつとの唯一の繋がりだと。
あいつとの思い出だと。

あいつの言うとおりだった。
私はあいつを知ったつもりでいたのだ。
あいつの心の内を、気持ちを。
私があいつの理想像として、勝手に押し付けていただけなのだ。
私が好意を抱いているのだから、一夏も少なからず好意を抱いていると。
私が一夏との繋がりを信じているように、あいつも信じていると。
結局それはすべて私の妄想でしかなかった。

一夏、私の知らない六年間に、一体何があったというのだ。
一夏は『闇影』と名乗り、千冬さんを見下すような、嘲るかのようになっていた。
あんなにも一夏を大切にしていた千冬さんを、あいつは失望したと言っていた。
あいつも千冬さんを慕っていると、私も、千冬さんもそう思っていた。
なのに、あいつはずっと本心を隠していたと言うのだ。
一体何があいつをああさせてしまったのだ?
何が原因であいつは自分を隠すようになっていたのだ?
何もわからない。
何も知れない。
知ることも出来ない。
あいつの気持ちも、あいつの強さも、あいつの目的も、何もかもが知れない。
あいつのことを知りたいのに、それは叶わない。

それと、あいつの兄を、姉を名乗る、刹那と言う男と琉歌、夜空と言う女。
あいつらは一体何者なのだ。
一夏はあんな奴らを、本当の家族のように慕っているように見えた。
一体何があったというのだ。
私たちの知らない間に、何があったと言うのだ。
それに、あの男が持っていたIS。
あの性能ははっきり言って異常であった。
あんな物、一体どこの誰が作ったのだ。
それに、ISを一体どこで手に入れたのだ。
あの男に、女には謎が多すぎる。
いくら考えても何もわからない。
余計にわからなくなるだけだ。
私は、もう一夏のことを知れないのだろうか。


Side〜箒〜out


Side〜千冬〜

私は三年前、行方不明となった一夏が見つかったと聞いたときは嬉しかった。
居ても経ってもいられなくなった。
どこで見つかったとかはどうでもいい。
ただ、一夏が生きて見つかっただけで嬉しかった。

だが、一夏は見違えるほどに変わっていた。
『織斑』の性を捨て『闇影』と言う性を名乗っていた。
私の攻撃を防げるほどに強くなっていた。
私に失望いたと言っていた。
私はただ、一夏のために頑張っていただけなのに。
それなのに、私は一夏に失望される何かをしていた。
私は一体、何処で何を間違えたのだ?
何を間違えて失望されて、何が理由で帰ってこなかったのだ?

私が助けに行かなかったことが理由なのか?
言い訳にしか聞こえないだろうが、私は助けに行けなかったのだ。
なぜなら、決勝戦の時は一夏が誘拐されたとは知らなかったのだから。
政府が決勝が終わった後に、一夏の誘拐のことを知らせてきたんだ。
私はそれを知って、表彰など放っておいてその場所へと急いだ。
だが、私がついたときには数人の男と一人の女が倒され、そこに一夏の姿は無かった。
私は一夏がこの惨状を作り出した何者かに誘拐されたのではないかと、国に一夏を探すように迫った。
国だけでは頼りにならないので、束にも頼んだ。
だが、束にも頼んだのにも関わらず、最近まで一夏の存在が一切掴めなかったのだ。

その間、私はドイツ軍にいた。
助けには行けなかったが、一夏が捕まっていた場所を提供してくれたのがドイツ軍だったからだ。
一夏の捜索は他人任せで、私は逃げていたのだ。
もしも一夏が死んでいたら、家にいたらそんな考えをしてしまうから、だからドイツへと逃げたのだ。
私は世界最強などと言われているが、弟の生存を信じれない、ただの弱者だ。
私は、現実から逃げていた弱者でしかない。

そんな弱者である私は、今の一夏を一番理解しているであろう男女に嫌われている。
何が理由かはわからない。
私たちは会ったことが無いからだ。
だがまあ、思い当たる節はある。
一夏を助けに行かなかったことだろう。
実の弟を助けずに、栄光を取った最低な姉と見られていても仕方が無い。
私の意志とは関係なしに、結果的にそうなってしまったのだから。
だが、それだけではないことはわかっている。
はっきりした理由はわからないが、私を殺してもいいほどの理由を持っているのだろう。
……まさか、私が『白騎士』だと知っているのか?
……あれほどの手練なら、白騎士と私の動きを見合わせるなど、容易だろうからな。
その可能性はありえなくは無い。
だが、『白騎士事件』で私を殺したいほどに怨むような理由は無いはずだ。
ましてや、誰かが死んだ訳でも無い。
……考えれば考えるほどわからなくなるな。

わからないと言えば、あの男のISと、一夏の白式もだ。
あんな性能を持つISをどこで手に入れたのか。
だが、詮索することは出来ない。
たかが教師一人が手に負えるような問題ではないからだ。
世界の決定に、私程度が抗えるわけがない。
そして、白式の武装≪雪片参型≫。
あれは私の≪雪片≫が発展した物だが、私も束も、あんな武装は知らない。
束が作ったのは≪雪片弐型≫と言うのだが、白式にそんな名前の武装は無く、あるのは≪雪片参型≫と言う謎の剣だ。
束が嘘をつく意味が無いし、束自身も驚いているようだった。
考えられるのは、一夏が≪雪片≫を変えたということだ。
確かにISは自己進化するようになっているが、武装に変化はありえない。
武装は本来後付けされるものだからだ。
故に、武装が変化することなどありえないのにもかかわらず、≪雪片≫は変化した。
何が作用して≪雪片≫が変化したのかわからない。
まあ、製作者である束でさえもわからないのだから、私がわかるはずもないのだが。

なあ一夏……私は何を間違えていたんだ……?
……どうしたらお前は私を許してくれるんだ……?
……いや、許してくれなくていいから……だから教えてくれ……。
私は何を間違えていたのだ……。


Side〜千冬〜out


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