小説『IS インフィニット・ストラトス 〜闇“とか”を操りし者〜』
作者:黒翼()

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第二十四話『襲撃事後』



「お疲れ様一夏。 全力は出さなかったようだね」

一夏が使ったのは、MVSとランドスピナー、そしてブレイズルミナスの三つだけであった。
まだ武器があったのに使わなかったのは、使うだけ勿体無いと判断したからだ。

「あの程度の敵じゃあランスロットの力を全て見せるほどの相手じゃないし。 にしても、全部雑すぎてそんなに厄介でもなかった」

一夏は無人機を葬った後、何事も無かったようにピットに戻ってきた。
呆然とする中、刹那と琉歌、夜空はいつもと変わらない様子で一夏に話しかけていた。

「ま、“あれ”はここでやるには危険だからね」

「私の守護領域も破壊しかねないしね」

「まあ、使う相手がいないだけいいのよ」

「“あれ”使うにはトランザム使わないとできないし。 使う気は無いけど。 というより、“あれ”はあの程度の敵に使うには勿体無さ過ぎるし。 そもそも、俺はここら一帯を吹き飛ばす気は無いぞ」

一夏たちの言う“あれ”とは、『ランスロット・パラディン』の誇る最強の武装である。
威力は、琉歌の『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』をも凌駕するほどの威力であり、最大威力で放てば、島一つ消し飛んでもおかしくは無いだろう。

「さて、試合は中止になったし、戻るか」

刹那たちは、織斑千冬たちを残して去っていった。
誰もが機体について聞きたかったのだが、聞けないので仕方が無いのだ。




 ☆




「刹那兄、これ」

「これは……。 よく取ったね、これ」

戦艦に戻った一夏が渡したのは、ISのコアであった。
あの戦いの中、一夏は無人機の一機から、誰にも気づかれること無く抜き取っていたのだ。

「一応一つくらいはいるかなって思って。 さり気なく抜き取っておいたんだ。 あ、抜き取ったことがばれないようにしておいたから」

「流石だね。 解析は僕に任せな」

「ああ。 俺は解析なんて出来ないしな」

「ああ、一夏。 わかっていると思うけど、篠ノ之束にパラディンのことがばれたと考えておいた方がいいよ」

「ああ、やっぱり? まあ、あんなもん送ってくるのなんてあいつくらいしかいないしな。 まあ、たとえばれても問題ないだろ?」

「まあね。 クラッキングを仕掛けれるわけが無いけど、たとえ受けたとしても問題ない。 『己が栄光のためでなく(フォー・サムワンズ・グロウリー)』を嘗めないでほしいね」

『カオス・クリスタル』が生み出す機体には、『己が栄光のためでなく(フォー・サムワンズ・グロウリー)』の効果を付属させることが出来る。
だが、完全偽装は無理で、出来るのは多少の偽装程度だ。
それでも、篠ノ之束のクラッキングを跳ね除けるくらい、余裕であるが。

「ああ、そういえば一夏。 これを渡しておかないといけないんだった」

刹那は一夏に鍵を投げ渡す。

「これは?」

「お前の新しい部屋の鍵だよ。 受け取っておいた」

「んじゃ、俺は移動の準備をしないとな。 いくら戦艦があると言っても、俺が移動しないのは怪しまれるしな」

「ああ。 悪いけど、ハロに手伝わせてくれ。 僕はすぐに解析を始めるから」

「わかった」

「一夏、手伝おうか?」

戦艦を移動しようとする一夏に、琉歌が話しかけた。

「俺一人で大丈夫だよ。 それに、ハロもいるからさ」

「そう?」

「そ。 んじゃま、おやすみ」

一夏はそう言うと、戦艦を立ち去った。

「……刹那」

「ああ。 あの三機は、間違いなく篠ノ之束の物じゃない……」

刹那は、直感的にそう感じていた。
後半に出てきた三機は、別の者が作った物だと。
しかも、自分に似た存在が作ったものだと、感じている。

「この感じ……人ならざる者の力だよ」

刹那は、一夏から渡されたコアを見ながらそう言う。

「もしかしたら、別の神の適応者かもしれないわね」

「そうね。 この力の波動は、多分原初神ではないわ。 でも、高位の神であることは間違い無いわ」

夜空は、コアから発せられる独特の波動を読み取り、その神の力の正体を探る。

「ごめんなさいね。 正体がわかればよかったんだけど……」

「原初神の力じゃないってことがわかればいいよ。 それだけわかれば十分さ」

神の適応者が他にいるということがわかれば、それだけで収穫である。
神の頂点である原初神カオスの適応者である刹那からしてみれば、他の神の力など注意しておく程度の存在だ。

「さて、これの解析をしないとね」

刹那たちは、そのコアの解析を始めた。




Side〜???〜

「ちっ。 まだ使えねえな」

俺様は選ばれた人間だ。
何たって、神の力の適応者なんだからな。
俺様は、この世界の神になる男だ。

「にしても、原作主人公の織斑一夏があんなに強ぇとはな。 まあ、所詮人間だ。 俺様の力には勝てねえか」

俺様は原作に興味はねえ。
ただ、原作のキャラが苦しみ、泣き叫ぶ様が見てぇだけだ。
あんなハーレム野郎、この俺様が直々に殺してやるよ。
ああでも、原作ヒロインは見た目はいいから、織斑一夏の目の前で捕まえて、無理矢理犯すってのもありだな。
あいつらの無意味に抵抗する姿、泣き叫ぶ姿、そして快楽に墜ちていくのを見るのは最高に面白そうだ。

「だが、あの闇影刹那って野郎は何なんだ? あんな奴、原作にはいなかったぞ?」

まあ、クラス対抗戦に出てこなかったってことは、織斑一夏以下の雑魚か。
あれだけ強い奴はそうはいねえからな。
本当にあいつも俺様と同じ転生者か?
原作主人公に負けてんじゃねえか。
まあ、力を隠していたとしても、所詮たかが転生者だ。
俺様には、神の力を使う俺様には勝てねえな。

「まあいい。 最強はこの俺様だ。 この世界で俺様に敵う奴なんて、存在しねえ」

神に敵う人間なんて存在しねえ。
たかが転生者如きに、このウラヌスの力を超えることなんてできねえ。

「さて、もっと強い無人機でも作ってやっか」

もっと完成度の高いヘカトンケイルを作ってやるか。
ウラヌスは、俺様にこそ相応しい。
だから、いくら無人機と言えど、ウラヌスの名前をくれてやることはできねえ。
無人機如き、醜いヘカトンケイルで十分だ。

「さーて、世界を恐怖で支配してやるために、準備をしねえとな」


Side〜???〜out




「この製作者、神の力に溺れているだけの馬鹿ね。 全然出来てないわ」

「あの性能、神の力で作ったからこその物ね。 そうじゃなかったら、篠ノ之束の機体以下よ」

「まあ、所詮その程度の神の力ってことでしょ。 僕たちにはカオスが付いているんだ。 その程度の奴、恐れる必要は無いよ」

コアの解析が終わったら、刹那たちはその製作者に酷評をしていた。
機体の中身はすっかすかで、ただ動いているだけ。
遮断シールドを破壊できたのは、神の力で作ったからで、それがなければ動くだけの鉄屑だったのだ。

「まあ、神の力を使える以上、一応警戒はしておこうか。 原作を知っている奴だったら、間違いなく重要人物である一夏や織斑千冬に関わってくるだろうからね。 もしかしたら、一夏と仲のいい娘を狙ってくるかもしれない。 イレギュラーである僕たちを狙ってくるかもしれない。 特に琉歌と夜空は気をつけてね。 二人は綺麗なんだから、下種な糞野郎だったら間違いなく狙ってくるだろうからね」

「わかってるわ。 もしもの時は真名開放やミラージュがあるから大丈夫よ」

「私はカオスの欠片よ? 神の力の適応者如きに遅れは取らないわ。 でも心配してくれてありがとね」

「当然だよ。 そんな下種に、僕の大切な二人に触られたくないからね」

「ふふっ、まだそんな下種って決まったわけじゃないじゃない。 でも、ありがと」

とりあえず、その適応者の警戒はしておくことになった。



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