小説『IS インフィニット・ストラトス 〜闇“とか”を操りし者〜』
作者:黒翼()

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第三十話『ばれる正体』



「どうしたんだい、一夏?」

『あのさ……悪いんだけど、ちょっと俺の部屋に来てくれないか?』

「別に構わないけど、何かあったのかい?」

戦艦に戻ってしばらくすると、一夏から連絡が来た。
刹那は特に用事も無かったので了承するが、一夏が自分を呼び出す理由を尋ねてみた。

『あー……ちょっとな……』

「珍しく歯切れが悪いね。 もしかして、誰かの裸でも見たかい?」

『うっ……』

一夏の反応は実にわかりやすかった。

「ああ、見たんだ。 それで、どうして僕が行くべきなのかな? 見た相手が悪かったのかな?」

刹那は誰の裸を見たかは、もうわかりきっていた。
一夏が裸を見る可能性があり、なおかつ刹那に来て欲しい相手など、一人しかいないからだ。

「シャルル・デュノア。 “彼女”の裸を見たんだね?」

『っ! ……ああ』

「ちょっと待ってて。 今行くよ」

刹那の予想通りであった。
刹那は通話を切ると、一夏の部屋へと向かうために歩き出した。




 ☆




「あ、刹那兄!」

「あっ、刹那さん……」

「待たせたね」

刹那が一夏の部屋にやってくると、一夏とシャルルはベッドに座って向かい合っていた。

「さて、一夏のラッキースケベには呆れるね」

「俺まだ何も言ってないけど!?」

刹那は早々に決め付けた発言をしていた。

「違うのかい? どうせ、前みたいにボディソープやら何やらが無くなってたっけから始まって、渡しに行ったらちょうどばったり遭遇ってオチでしょ?」

「た、確かにそうだったけど……」

ちなみに、これは過去に琉歌でやってしまっている。
で、これがその時の工程。

『一夏、シャンプーが無いことを思い出す』
        ↓
『換えのシャンプーを持って洗面所へ』
        ↓
『洗面所が脱衣所と兼ねていて、風呂場が繋がっているため、シャンプーを持ってきた一夏と、シャンプーを探しに来た琉歌が遭遇』
        ↓
『琉歌感謝。 一夏赤面』
        ↓
『一夏謝罪。 後に即退散』
        ↓
『それが刹那に伝わる。 そして呆れる』

以上が、以前に起こったことの流れだ。
ちなみに、今回も前回と似たようなことになっている。

「で、どうしてわざわざ僕を呼んだんだい?」

「それは、シャルルがわざわざ男装してまで入学してきたってことは、絶対何かある。 だから、もしものときは刹那兄の力を借りたくて」

「そんなことだろうと思っていたよ」

刹那と一夏はそんな風に会話しているが、その話の中心であるシャルルは、俯いたまま黙り込んでいた。

「さて、話をしようか」

刹那がそう言うと、シャルルはビクッと反応し、何かに脅えるように、震えていた。
刹那の異常さを体感し、目の当たりにしたがために、もしもそれが自分に向けられたときのことを想像してしまったがために、恐怖に震えているのだ。

「そんなに脅えなくてもいいよ。 僕は君をどうこうしようとする気は無いからさ」

「とりあえず話してくれないか? 理由がわからないと、何をどうしたらいいのか判断できないからさ」

二人はシャルルに優しく語り掛けた。
話が聞かないと訳がわからないし、どうすることも出来ない。
シャルル自身の口から言わない限り、刹那は行動を起こすつもりも無い。

「……わかり、ました」

覚悟を決めたのか、顔を上げるシャルル。

「あ、俺、お茶出すな。 長話になりそうだし」

「ああ、お願い」

「あ、聞いてるから、話してていいから」

「いや、待つよ。 僕だけじゃあ彼女も話しづらいだろうからね」

目の前に刹那がいては、シャルルも話しづらいだろう。
刹那を抑えることが出来る琉歌や夜空がいた方が、話しやすかっただろう。
刹那は、琉歌か夜空のどちらかを一緒に連れて来ればよかったと、今になって若干後悔していた。

「白ハロ、出て来な」

「ハイサー」

一夏の『ランスロット・パラディン』から白ハロが現れ、ぴょんぴょん跳ねて刹那の手元まで跳んで来た。

「白ハロ、ご苦労様」

「ゼンゼン、ゼンゼン」

「ご褒美だ。 新しいデータを組み込んであげる」

「ヤッフー!」

「刹那兄は何をしているんだ!?」

刹那と白ハロがやり取りをしていると、一夏がつっこんだ。

「何って、白ハロにご褒美と言う名のデータを入れるんだよ」

「何のデータを入れるんだよ!?」

「新しいクラッキング方法」

「禄でもない物が増えてるのはあんたの所為か!」

白ハロのデータを確認すると、時々新しいデータが増えていることがあり、それが刹那が組み込んだ物だと知って突っ込んでいた。

「禄でも無いなんて失礼な。 こう見えて白ハロは白式の不法アクセスを防いでいるんだよ。 その防衛手段だ」

「白式のデータはどうでもいいって前に言ってただろ!?」

「だからといって、白ハロの暇つぶしを用意してあげないと、製作者の名折れと言う物じゃないか」

「暇だったらスリープモードになればいいだろ!?」

「一夏は自分をサポートしてくれるハロを道具として見ているから馬鹿にされるんだよ」

「あれは俺の所為なのか!?」

白ハロに遊ばれる理由を知って、意外な真実に叫んでいた。

「バーカ、バーカ」

「子供かっ!」

「コドモデナニガワルイ!」

「開き直るな!」

「クスッ」

刹那と一夏、白ハロのショートコントに、シャルルが笑った。

「ようやく笑ったね」

「え?」

「そんなに緊張しなくていいよ。 僕は君の敵になるつもりはないからさ」

「そうだって。 笑ったシャルルの方が綺麗だしさ」

「ふえぇっ!?」

一夏はお茶が準備できたのか、手にお盆を持ち、そう言った。
シャルルは、いきなり綺麗と言われ、若干パニックに陥った。

「一夏は本当に天然タラシだよね」

「え、刹那兄。 何か言った?」

「何も言ってないよ」

「? まあいいや。 とりあえずお茶な。 熱いから気をつけろよ」

「ありがと」

「あ、ありがと……」

とりあえず、話し出す前にお茶を啜るのであった。



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