小説『IS インフィニット・ストラトス 〜闇“とか”を操りし者〜』
作者:黒翼()

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第三十七話『学年別トーナメント開幕』



六月も最終週に入り、IS学園は月曜から学年別トーナメント一色にと変わる。

「シャルロット、大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ。 この子も、問題ないよ」

シャルロットの愛機は、刹那が『カオス・クリスタル』で創り上げた機体に変わっており、今日が初披露の日だ。
当然、機体には何十にもリミッターが掛けられ、白式を少し上回る程度の性能しかない。
と言うより、姿そのものが変わっている。
リミッターを全て解除した時、真の姿になるように設定されているのだ。
だから、シャルロットの扱う機体はISだ。

「……ねえ一夏」

「なんだ?」

「僕は……私は、この子の主として、この子を使っていいのかな……」

シャルロットは、新たな機体の待機状態である十字架を模したネックレスを優しく触りながら、不安げに言った。

「ばーか。 何言ってんだよ。 いいに決まってるだろ」

そんなシャルロットに、一夏は笑いながら言った。

「お前はそいつを受け取ってから、より頑張ってきたんだ。 それに、あいつらと対話したんだろ?」

「う、うん……」

一夏の言う“あいつら”とは、刹那の創る機体に宿る、擬似生命たちだ。
刹那の『シャドウパラディン』シリーズの『ブラスター・ダーク』が一つの例だ。
一夏の『ランスロット・パラディン』にも、琉歌の『ファントム・ミラージュ』にも、シャルロットの機体にも宿っている。
ちなみに、夜空は刹那と同じ『シャドウパラディン』シリーズの生命体たちが宿っている。

「対話して、認められたんだろ? だったら、そいつらの王として、主として、堂々としていればいいんだよ」

「……ありがとう、一夏。 おかげで目が覚めたよ。 彼らが認めてくれたのに、私がこんな体たらくじゃ駄目だよね」

「ああ。 こいつらの主に認められるって言うことは、とても誇らしいことなんだ。 もっと自分を誇るべきだ」

「そうだね」

そう言うシャルロットには、もう不安なんてものは無かった。

「さて、そろそろ対戦表が決まるはずだな」

本来なら、前日には出来るはずなのだが、突然のペア対戦に変更がされて、従来まで使っていたシステムが正しく機能しなかったのだ。
故に、生徒たちが手作りの抽選くじで、対戦表が作られている。

「あいつ、どこで当たるんだろうな」

「どうだろうね。 でも、一夏と私なら、誰が相手でも負けないよ」

「それもそうだな。 それに、鈴とセシリアの礼をしなきゃいけないし、とりあえず、あいつはサクッと潰す」

「じゃあ、相方は私がやるね」

「おう、任せた」

そんなラウラにとっては途轍もなく恐ろしい話をしていると、対戦表が決定した。
モニターがトーナメント表へと映り変わり、二人の対戦相手の名前が顕わになる。

「「あ」」

一夏とシャルロットは、その名前を見て素の声を出した。
その対戦相手とは、ラウラと箒のペアであった。




 ☆




「初戦から本命みたいだね」

刹那たちは、戦艦の中から、学園内の様子を見ていた。

「そうみたいね。 まあ、一夏とシャルロットなら、大抵の相手は軽く捻り潰せるだろうし、問題ないでしょ」

「問題は、シャルロットがあの機体をどれだけ使いこなせるか、ということよね」

シャルロットに渡した機体は、『ラファール・リヴァイヴ』とは桁違いの性能を誇る。
それは、リミッターが掛かり、仮の姿の時でさえも、性能差はある。
それに、搭載されている武器も、前の機体の時よりもずっと強力である。
渡されて、然程時間も経っておらず、その機体で練習する時間も少なかった。
だから、シャルロットが機体性能に弄ばれることを危惧しているのだ。

「まあ、大丈夫だと思うよ。 シャルロットは、あいつらに主として認められている。 それが意味するのは、既にシャルロットは、何かが常人離れしていると言うこと。 真の姿ならまだしも、仮の状態なら問題なく扱えるはずだよ」

「まあ確かに、あの『かげろう』に認められているのなら、問題は無いかもね」

「というより、よくこの短期間でオーバーロードを認めさせたものね」

「僕自身驚いたさ。 まあ、オーバーロードには、僕たちには見えない何かが見えたんだと思うよ。 だから、シャルロットが一人の時は、オーバーロードに任せるよ」

「それが打倒ね。 オーバーロードたちなら、問題ないだろうし」

擬似生命体たちの中でも、破壊に関しては絶対の信頼を寄せる『かげろう』だからこそ、シャルロットの機体に宿したのだ。

「さて、そろそろ時間よ」

「みたいだね。 二人を相手に、どこまで喰らい付けるか、見物だね」

「そうね。 せめて瞬殺されないようには頑張ってほしいものね」

三人は、そんなことを考えながら、試合の行く末を見届けることにした。



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