小説『IS インフィニット・ストラトス 〜闇“とか”を操りし者〜』
作者:黒翼()

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お久しぶりです。
テストがあり、パソコンに触れなかったので、更新できませんでした。
これから再開していくので、またよろしくお願いします。


第四十九話『デートの邪魔者』



男性水着売り場に甘甘な桃色空間を生成し、被害者を続出させていた一夏とシャルロットは、何やかんやで元通りとなると、一夏の水着を選んで購入した。
その後、シャルロットの水着を買うために、女性水着売り場へと向かっている。
ちなみに、一夏の水着は、ネイビーのトランクスタイプのものに、白いラインが入っている。

「シャルロットの水着姿か……シャルロットは可愛いから、何でも似合うな」

「一夏って、恥ずかしいことを普通に言うよね……」

若干頬を赤くしているシャルロットに対し、一夏は平然としていた。
一夏は、シャルロットを愛でることに関しては、滅多なことでは恥ずかしいと思わないのだ。

「シャルロットが可愛いのは覆されることのない事実。 恥ずかしいことなんか、何もない。 当然のことを言うのに、恥ずかしいとは思わないさ」

「うん……一夏が恥ずかしくなくても、私が恥ずかしいんだからね?」

「恥ずかしがるシャルロットも可愛いぞ」

「そういうところを言っているんだよ……」

堂々と言う一夏に、呆れ成分を含んだため息をつくシャルロット。

「シャルロットを愛でるのが、最近の俺の楽しみだからな。 俺は、可愛いシャルロットが見るためなら、大抵のことはするぞ」

「犯罪だけはしないでよ」

「しないさ。 犯罪ギリギリのことはするかもしれないけど」

「うん、そういうと思ってたよ」

犯罪者予備軍の一夏であった。
まあ、ギリギリセーフなら、犯罪ではないから問題ないのだが。
……倫理的にどうかとは思うが。

そんなこんなで、女性水着売り場へと足を踏み入れる一夏とシャルロット。
日曜日ということもあり、女性客はそれなりにいる。
そんな空間に、男性が踏み入れれば目立つわけで……。

「さて、シャルロットの水着をえら―――」

「そこのあなた」

名前も知らない、顔も見たこともない女性客の一人に声を掛けられた一夏。

「―――びたいんだけど、面倒なことになりそうな気がする……」

「そこの水着、片付けておいて」

ISが普及されてから、女尊男卑という風潮が浸透した。
その所為もあり、初対面の相手(女性)から、そんな風に命令されることは、それなりにあるのだ。
だが一夏は、そんな風潮を認めていないし、それを貶している。
さらに、今はシャルロットとの記念すべき初デートの真っ最中なので―――

「チッ……邪魔しやがって……。 ……ざけんな。 自分でやりやがれ」

―――物凄く不機嫌になる。
つい先ほどまで笑顔だった一夏が、一瞬にして苛立った。
しかも、大分不機嫌のようで、それが若干表情に出ている(隠すつもりがないだけかもしれないが)。

「何、その口の聞き方。 あなた、自分の立場もわかってないみたいね」

そう言って、女性客は警備員を呼ぼうとする。
今の風潮が浸透して以来、女性が『いきなり暴力を振るわれた』などといえば、問答無用で有罪確定となる。

「そこまでにしてくれませんか? 彼は私の恋人なんです。 邪魔、しないでくれませんか?」

そう言って割り込んだシャルロットは、顔では笑っているが、目は笑っていなかった。
シャルロットも、一夏が馬鹿な女に絡まれたことに、苛立ちを感じていのだ。

「あなたの男なの? 躾くらいしっかりしなさいよね」

こういった女は、一部であって、全てではない。
多くの女性は、ある程度は男性の社会的立場というものを認めてはいる。
しかし、男性が女のために働くというのは当然のことだという考えは、広まってしまっている。

「まったく、これだから男は……」

そんなことをぶつぶつと呟きながら去っていく女に、シャルロットは反射的に追いかけようとしていた。
愛すべき一夏を侮辱されたことが、我慢ならなかったのだ。
だが、シャルロットは一夏に腕をつかまれて止められた。

「よせ、シャルロット」

「でも一夏! あの人、一夏のことを!」

相当頭にきているのか、語調が荒くなるシャルロット。
そんなシャルロットに対し、一夏は冷静に言う。

「放っておけ。 するだけ無駄だ」

「無駄って―――!」

「もう、あいつは終わりだよ」

「っ! それって、どういうこと……?」

一夏の言葉に、シャルロットは怒りよりも疑問が最優先となった。
そう言う一夏の瞳に、哀れみの感情があることに気づいたからだ。

「今、一瞬だけ、ほんの一瞬だけだけど、感じたんだ」

「感じたって、何を?」

「背筋が凍る感覚」

「せ、背筋が凍る? 気のせいじゃないの? 私はそんなの感じなかったよ?」

「それは、シャルロットがまだ俺のいる領域へと―――異常の領域に踏み入れてないからだ。 俺でもギリギリ感じ取れるくらいのものだったけど、間違いない。 間違いであってほしいと思うけど、俺の直感が間違いではないと言っている」

常人としての異常の領域に踏み入れている一夏は、一般人とは基本スペックが違う。
一夏は戦闘分野が特に異常であり、気配察知や直感など、総合能力では刹那たちを除けば世界最高だ。
いくら一夏が未だに未熟であるとはいえ、常軌を逸した気配察知能力のおかげで、本能的な直感のおかげで、そう判断できてしまったのだ。

「俺に背筋を凍らせる感覚を与えるほどの気配を出せるのは、俺が知る限り刹那兄たちだけだ。 多分、刹那兄たちは、さっきの光景を知っている。 刹那兄たちも言ってただろ、問題は排除したいって」

「まさか……!」

そこまで聞いて、シャルロットは思い至った。
一夏が何を言いたいのかを。

「そうだ。 これらから推測するに、多分刹那兄たちはあいつに何かをする」

「もしそうなら、私たちが何かするだけ無駄、だね……」

刹那たちに目をつけられて、ただで済むわけがない。
それこそ、相手が誰であろうと哀れみたくなるほどに。

「今のことは忘れよう。 俺たちはただ、水着を買いに着ただけ。 俺たちがここに来ても、何も起こらなかった」

今のことを覚えていれば、デートに支障が出てしまう。
だから、少なくとも今だけは忘れる。
忘れなければ、あの女への哀れみがデートの邪魔をしてしまうからだ。

「そう……だね……うん、そうしよう。 せめて、今だけは忘れて、デート、しよっか」

「ああ」

一夏とシャルロットは、すっかり意識を切り替えて、デートを再開したのだった。



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