小説『IS インフィニット・ストラトス 〜闇“とか”を操りし者〜』
作者:黒翼()

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第七話『カオスの誕生』



「あれ……? 涙が、止まらない……」

流れ出した涙が、まったく止まらない。
刹那は自分が思っている以上に、カオスに感情移入しているようだ。

「ねえ……僕はこの結晶、何があっても貰うから。 これは譲れない。 譲れなくなった」

刹那は止まらない涙を放置し、涙を流したまま言った。
だが、涙を流していると言うのに、その格好良さは一際増していた。

「ええ、元よりそのつもりです。 どうぞ受け取ってください。 それが貴方を最強であることを、未来永劫揺るぎ無いものにするでしょう」

「ありがとう」

刹那は女神に礼を言う。

「それと、この結晶を、ISとして、あまり纏わない方がいいと思います」

「どうしてだい?」

「それは、元々はノーリスクで使えるように設定していましたが、カオス様の力が混ざったことで、それが不安になったからです。 いくら能力を制限しているとはいえ、体に負担をかけるかもしれないんです」

「わかった。 だけど、それだとISを使えないよ」

「それは大丈夫だと思います。 それには、物を創造する力がありますから。 それで生み出した物なら、カオス様の力は加わりません」

女神の発言に、刹那は質問する。

「どうしてわかるんだい? カオスの適応者は、僕が初めてなんだろう?」

「ええ。 ですが、創れる物は、その結晶『ダーク・クリスタル』―――じゃなくて、『カオス・クリスタル』よりも低スペックなんです。 そして、大事なのは創る時のイメージです。 これを忘れなければ、大丈夫です」

「そうか。 じゃあ、忘れないようにしないとね」

「一応、後で記憶の上書きをしておきますね」

「ありがとう」

刹那は、女神の気遣いに礼を言う。

「ああ、戻る前に、一つやっておくことがあるんですよ」

「やっておくこと?」

女神とゼウスは刹那に手のひらを向け、何かを呟いた。

「これでよし。 意識が戻ったら、彼女さんにキスしてください。 それで全て彼女に伝わります。 絶対にしてくださいよ。 それが彼女のためにもなるんですから」

「あ、ああ、わかった」

琉歌とキスすることに抵抗は無いが、命令されたことに抵抗があった。
だが、琉歌のためだと言われると、それに従うしかないのが刹那であった。

「では、またお会いしましょう」

刹那の意識が再び切り替わり、元いた廃ビルの地下に戻った。
戻ってきた刹那は、琉歌に抱きかかえられ、琉歌は心配そうに刹那を見ていた。

「刹那、大丈夫?! 急に倒れるから心配したのよ!?」

「ああ、ごめん、琉歌。 それと―――」

「きゃっ」

琉歌は急に引っ張られて小さな悲鳴をあげ、強引にキスされた。
琉歌の頭の中には、何かの映像が流れ込んできた。
それは一瞬のことであったが、琉歌は数分のことのように感じられた。

「……そんなことがあったのね」

「ああ。 強引だったけど、嫌だったか?」

「全然。 むしろ嬉しかったわ。 少し驚いたけどね」

「そうか」

刹那は立ち上がり、未だに浮遊する黒き結晶を見る。

「そういえば琉歌。 神がお前のためになるって言っていたんだが、何かかわったことはあるか?」

「ええ。 感じられる魔力量が増えたわ。 これで、真名開放が五回は連発できるわ。 それに新しいスキル『神の加護』が付いたわ」

「琉歌にもついたのか。 そのランクは?」

「A+よ。 刹那は?」

「僕もA+だよ。 もう僕は、人間の皮を被った化物だ。 今ならこの結晶の力が無くとも、ISを軽く潰せる自信がある」

「私も同じよ。 総合的なスキルでは刹那に遠く及ばない。 でも、私には最強の防御と治癒を兼ね備える宝具『全て遠き理想郷(アヴァロン)』や、辺りを軽く吹き飛ばす『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』と『勝利すべき黄金の剣(カリバーン)』があるわ。 私も化物よ」

「それもそうか。 そもそも、宝具を扱えるだけで化物だったね」

「そうよ」

どちらも人を超えている。
宝具が無くとも、そのスキルと磨き上げられた武練だけで最強を誇れる。

「さて、これを目覚めさせないとね」

刹那の視線の先には、相変わらず原初神カオスの力が混入した神造兵器である黒き結晶がある。
刹那はその結晶に触れ、念じる。

(目覚めよ、カオス。 君の待ち人は、ここにいる)

黒き結晶から黒い風が発生するが、刹那と琉歌は怯まない。
そして、一際強く発光して、そのあまりの光ゆえに二人は目を覆った。
光が晴れ、結晶があった場所には、黒いドレスを身に纏った黒髪黒眼の少女がいた。

「この人が、カオス?」

「うん。 だけど、僕が見た女性よりも幼くなった感じだ」

刹那が見たのは少女ではなく女性であった。
だが、この美少女が成長すれば、あの美女になるのは容易に推測できる。
それだけ似ているのだ。

「ようやく見つけた。 私に耐えれる人間」

そう言うと、その美少女は刹那に飛びついた。
刹那は避けることもできず(する気もなかった)、その少女を抱きとめた。

「ああっ!」

琉歌は自分の愛する男に抱きついた少女に嫉妬した。
いくらその少女が原初神カオスであり、長く孤独だったとはいえ、それは琉歌を嫉妬させるには十分であった。

「ごめん、琉歌。 今はこうしていちゃ駄目かな?」

「ぅぅ……今だけだからね……」

意気消沈する琉歌を抱きしめたくなった刹那だが、自分に抱きつく少女を離すことは出来なかった。

「ずっとずーっと探してた。 欠片でも、私の力に耐えれる人を」

少女は刹那に強く抱きつき、頬擦りをする。
余程自分の力の適応者が見つかって嬉しいのだろう。

「ねえ、嬉しいのはわかるんだけど、自己紹介くらいしてくれないかな?」

「ええ、仕方ないなぁ」

少女は刹那から渋々と言った感じで離れ、自己紹介をする。

「私は原初神カオスであり、カオスでは無い存在。 私はカオスの分身で、カオスの力の欠片よ。 カオスと繋がっているから、カオスの意思でもあるの」

「何かややこしいが、要はカオスと同じだが違う存在ってことかな?」

「うん」

「違いは力の大きさ、と言ったところか」

「うん。 他の神たちに抑えられちゃったから、この姿なの。 でも、私は人間と同じように成長するように自分を構成したから、貴方と一緒に成長できるわ」

「そう。 知っているかもしれないけど、僕は闇影刹那。 君の力に反応された、君の適応者だよ。 そして、そこにいるのが僕の嫁だ」

「輝夜琉歌よ。 でも、後数年で闇影琉歌になるわ」

琉歌の自己紹介で、カオスはむすっとした。

「ねえ刹那。 あの娘よりも私のほうがいいと思うんだ」

「駄目だ。 僕は琉歌と一生一緒に生きるって決めているんだ。 いくら原初神の願いだとしても、それは受け入れられない」

「むぅ」

むくれるカオス。

「だけど、君は僕の力でもある。 そして、僕は君の適応者だ。 それに、神様にも頼まれたからね。 だから君から離れることは無いし、離れることも赦さない」

「ちょっと刹那!?」

琉歌は刹那の言葉に驚く。

「まあ、そこのところは琉歌と話し合ってくれ。 僕の一存で全てを決めることは出来ないからね」

「……わかったわ。 私の方が後からだったし、貴方に従ってあげる」

「ありがとう、カオス」

「今はおとなしくしてるわ。 じゃあね」

カオスがそういうと、刹那の首にチョーカーのようにくっついた。
元より神造兵器のISもどきのため、ISとしての機能を持つようだ。
カオスと言うのは、どうやらいろいろとややこしいみたいであった。

「今日は帰るか」

「そうね。 私も話さないといけないから」

二人は寄り添いながら、帰宅したのだった。



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