小説『IS インフィニット・ストラトス 〜闇“とか”を操りし者〜』
作者:黒翼()

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第八話『カオスの力』



「ねえカオス」

「何、刹那?」

幻夜と夢乃に新しい能力、及びにカオスのことを説明して、夜の刹那たちの部屋。

「これってどんなことができるんだ?」

刹那が指し示すのは元・黒き結晶で、現・チョーカーの神造兵器。
原初神カオスの力が混ざっている最強のISもどき。
その名は『カオス・クリスタル』。
元々は『ダーク・クリスタル』だったのだが、カオスが混ざったことにより、変化した。
刹那は女神による記憶の上書きで知っているが、女神よりも上位存在であるカオスから、ちゃんと確かめるために聞いていた。

「元々は神様が作ったやつなんだっけ、それ。 それに真祖の原初神の力が混ざったんだし、常識を軽く覆してくれそうなとんでも能力でも持ってそうね」

「何って言われると、いろいろ出来るわね。 ISって奴の機能は全て再現できているし、これは原初神たる私の力の欠片まで入っている。 流石に何でもは無理だけど、創造も出来るわ」

「たとえば?」

「んー、そうね、ISを軽く凌駕する性能のISもどきをいくらでも創ったりすることもできるわ。 それに、刹那の想像した機体もいくらでも形作れるし、記憶もできるわ」

「じゃあ、義手も創れるのか?」

「ええ、出来るわ。 機械系のもの……というより生物以外なら大抵創れるわよ。 まあ、能力に制限が掛かってなかったら、生物とか世界とかも創れるけどね」

「……凄いね」

「そうね」

あまりの便利さと凄さに、驚きを通り越して呆れる二人。
だが、それと同時に、真祖の神の力の混じった神造兵器だからこれくらい出来るか、という納得もあった。

「まあ、元々あの女神ちゃんが創ったこれの性質が『作製・保存』だったし、ISの完全コピーもその性質故に、あの女神ちゃんが作製して保存しただけなのよ。 それに加えて私の……カオスの力の欠片が混ざったことで、性質が『創造・貯蔵』にグレードアップしたのよ。 原初神の力の欠片だからって、甘く見ないでよね」

「いや、そのつもりは無いんだが……」

「むしろ凄すぎなんだけど……」

あまりのチート性能に呆れる二人。
でもやっぱり、納得もしているのだった。
いくら欠片とは言っても、真祖の原初神の力の混ざった神造兵器。
これくらいは当然かな、という思いがあるのだった。

「にしても、よく私を受け入れてくれたわね、刹那のお義父さんとお義母さん」

「ちょっと待て。 何か響きがおかしかったよ」

「ちょっと待ちなさい。 その話はまだしてないわ」

カオスの親の呼び方に、すかさず突っ込む二人。
琉歌に到っては、今日あったばかりのカオスに、刹那を取られたくないと言う嫉妬があった。

「お堅いわね、まったく。 いいじゃない。 刹那はその気なんだし」

「ちょっと待て。 僕はそこまで言っていないよ。 それは琉歌次第だと言ったんだ」

「私と話もしてないのに、勝手に決めないでよ。 少なからずカオスよりかは付き合い長いんだから」

「でも、私のほうが長く刹那を見ていたわ」

琉歌は四年前からであるのに対し、カオスは刹那が死んだその時から、ずっと見ていたのだ。

「屁理屈言わないの! 明日二人っきりで話し合うの! 良いわね?!」

「仕方ないわね。 結果として、私が割り込んだ感じだから、明日話し合いましょう」

カオスは琉歌に従う。
刹那は、ふと思った。

(僕は、どうしてこんなに好かれるんだろうか?)

二人とも超が付くほどの美少女だ。
方や美しい桜のようなピンクの髪に、澄んだサファイアのように美しい水色の瞳を持つ琉歌。
そして方や美しい黒髪に、宝石のような美しさを持つ黒き瞳のカオス。
前世とはまったく違う状況に、嬉しさと『自分が何故』という戸惑いがあった。
でも、その思考はすぐに捨てた。
自分を好意的に思ってくれるなら、それに可能な限り答えればいいだけだからだ。

「ねえ、カオス。 一ついいかな?」

「一つと言わず、いくらでも聞いてくれて構わないわよ?」

「君って、どうして一人だったの?」

神たちに言われたことは、刹那自身も気になっていたため、カオスに尋ねた。

「……それは、誰も私に気づけないからよ」

カオスは表情を暗くしながら、そう言った。

「気づけない?」

「これはあくまで私の推測だけど、カオスと言う存在の力が大きすぎる所為で、認識できないの。 誰だって、存在そのものが暴力みたいな奴に、会いたくは無いでしょう? たとえ会ったとしても大抵は逃げるものでしょ? それと似たような感覚だと思うの。 カオスの力が強大すぎるが故に、他の存在の本能が、カオスという絶対的強者から逃げて、本能が認識させないのよ」

「そんなことが……」

「でも、ならどうして今貴女は私たちの前にいるの? 私たちはちゃんと認識できているわよ?」

「それは私がカオスの欠片だから。 欠片と言っても、実際はカオスの膨大すぎる力のほんの僅か。 人間に例えるなら、垢とか汗とか、排泄物とかそう言う本体から溢れるものみたいな感じの存在が私よ。 その私が一般人に認識できるのは、刹那によって具現化されているからなの」

「僕によって?」

「そうよ。 刹那は私を認識できる特別な存在で、そして私の力を内包できるほどの器を持っているの。 刹那が『カオスの力』という巨大な存在を、刹那が他に見えるよう、具現化しているの。 だから私は貴女にも見えるの」

カオスは、琉歌を見ながらそう言った。

「私は刹那に感謝しているの。 今まで、私を認識できる存在なんて、存在しなかった。 だから、永久の孤独から救ってくれた刹那に感謝しているの」

「そうなのか……」

カオスの話を聞いていろいろと納得した刹那と琉歌であった。

「ところでカオス。 お前も本体と同じように呼ぶのもあれだから、別の名前を考えようと思うんだけど、どうかな?」

「別の、名前?」

「そう、別の名前。 カオスって言うと、この『カオス・クリスタル』や、本体である原初神カオスと混同するじゃないか。 だから、君だけの名前を考えようと思うんだ」

「私だけの、名前……それ、いい!」

カオスの反応は上々であることにほっとする刹那。
もしもカオスが、『カオス』という名でないと嫌と言えば、混同したまま過ごすことになる。
面倒に思ったので、この提案をしたのだ。

「気に入るかはわからないけど、『夜空』って言うのはどうかな?」

「『夜空』? どうして?」

刹那の考えた名前の由来が気になる二人。

「原初神カオスがいるのは『(から)の空間』だから、『(から)』から取って『(そら)』。 で、カオスは『混沌』って意味でしょ。 カオスは『空』って言うよりも、『夜空』の方がしっくり来るからかな」

「夜空……うん、いいよ、それ!」

カオス……否、夜空はそれに気に入るのだった。

「よし。 これからは夜空だ。 改めてよろしくね、夜空」

「よろしくね」

「うんっ!」



-9-
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