「それで?」
「とりあえず俺は野郎の死体を抱えて車庫へ隠した。ザッとだけど一応、血の後も拭き取った」
「何故、車庫なんだ?」
「うん。前に一度覗いたことがあって、きちんと鍵も掛けられるし、いったん置いとくにはいいと思った。とにかく、あんな物、リビングにあるよりは数段マシだろ?」
念のために言っておくが、とクレイは付け足す。
「車庫の鍵は開いていたぞ。おまえの親父さんのチェロキーの隣りに野郎の悪趣味なローライダーがきちんと並べてあった」
車庫の鍵を壊したのは自分ではないと、事前にクレイは断わっときたいんだな、とサミュエルは了解した。
鍵をこじ開けたのは、勿論、エルンストだろう。あいつならやるさ。何せ愛車を命と同じくらい大切にしてたから、東海岸の冷たい雨に濡らしたくなかったんだろうな。
だが、今二人が話すべき主題はエルンストの改造車についてではない。クレイも同感だったようですぐ話を本筋へ戻した。
「血を拭き取った後、おまえのバッグを持って外へ出ると引き返して来るおまえの姿がポーチから見えた。それで俺は、エニシダの根元をグルッと迂回して、ビーチローズの繁みを掻い潜り、マーガレットの群生を突っ切った後、藤棚の下を通り抜けて……コテージへ帰って来たのさ」
道順についてはよおくわかった。
だが、どうしたって再び話題はそこに行き着くのだが──
サミュエルは恐る恐る尋ねた。
「埋めたって言ったよね?」
「埋めたよ」
クレイはあっさり認めた。「今朝な。大丈夫、誰にも見られちゃあいない」
ジョギング帰りだと称した、汗グッショリのクレイの姿がサミュエルに甦った。この時間、浜は一番空いている、なんて言ってくれちゃって……
今度黙り込むのはサミュエルの番だった。
ベッドの縁に腰を落して頭を抱えたまま、かなりの間サミュエルはそうしていた。
やがて顔を上げると、
「何てことしちまったんだ、クレイ?おまえって、早トチリ過ぎる。信じらんないよ!」
そういえば、エルンストを俺の恋人と勘違いして一騒動起こしたこともあったっけ。こんなクールな容貌してて?これはないぜ。
「俺じゃない」
サミュエルは頭を振るとキッパリと真実を告げた。
「俺じゃないんだ、クレイ。俺も殺ってない……!」