「な?」
クレイはうんざりする作業の間中、足下に置いていた野外用のランタンを持ち上げてエルンストにもっと光が当たるようにした。
「俺が言った通りだろ?こう・・・…砂だらけじゃあ……もうおまえんちのリビングルームには戻せっこないよ」
「だからって、じゃ、どうするんだ?」
食い縛った歯の間から息を吐いてサミュエルは言う。
「これは元々あそこにあったんだぞ!それをよりによって複雑な真似してくれたもんだぜ。よくもこんな……〈ユージュアル・サスペクツ〉を地で行くような……」
サミュエルはバントリー家の庭弄り用のスコップを投げ捨てた。
「そもそも、どうしてこんな早合点したんだ?どうして俺が殺したなんて思ったのさ?」
暗い洞窟の中で、変わり果てたエルンストを目の当たりにしてサミュエルは今一度その問題を蒸し返さずにはいられなかった。最初に死体となった従兄弟を見たとき以上に気が滅入ってしかたがない。
「おまえは俺に理解してほしいと言うけど、でも、やっぱり、全然わからないよ!」
どう考えても今回の一連のクレイの行動は突飛過ぎる。常軌を逸している。
サミュエルはエルンストを指差しながら殆んど泣き声で言った。
「これを見ろ!ほら、右足のないのをどう思った?俺が嫌がらせで切り落としたってか?それとも、殺した後で罪を今流行の殺人鬼に擦りつけようと小細工したと思ったわけ?どっちにしたって不自然極まりない。だから──この右足がない時点で気づくべきだったんだ、俺じゃないって!」
「何とでも言えよ」
洞窟の湿った地面にシャベルを突き立てて、クレイも昨日からこっち何度も繰り返してきた弁明をまた繰り返す。
「これを見た時は俺だって冷静ではいられなかったんだから。ああ、認めるさ。俺は動転した。法廷で弁護士が『精神膠着!』って叫ぶあの状態だ。そんな中にあって、兎に角俺はおまえを守りたい一心だった。何とかしなくてはって──でなきゃ、誰が好き好んでこんなクソ野郎の死体、汗だくで運ぶ?」
クレイは口のバンダナを毟り取った。「全ておまえの為にやったことだ……!」
それを言われると何も言えなくなってしまう。サミュエルも口を閉ざした。