24
砂を蹴散らして二人が鯨岩へ到着した時には夕焼けはとっくに燃え尽きて空には月が掛かっていた。
月が投げ下ろすふんわりした青白い光の中で、改めてクレイとサミュエルは岩を眺めた。
驚いたことに、岩壁には刺青で白く抜いてあった印の部分までちゃんとあった。丸く凹んでいる辺りがそれだ。岩を鯨と見立てた時、ちょうど?目?のように見える位置にある。そのせいで岩は益々鯨染みて見えた。
もっと言えば、殺人鬼を撃ち殺した夜に見た、あの一匹にそっくりだった。
念の為、サミュエルは一応クレイに訊いてみた。
「ここを探検したことは?」
「いいや」
即座ににクレイは首を振った。「ここは俺のテリトリーじゃないよ」
だが、すぐ付け足した。
「こっち……絶対入れるはずだ。この手の岩なら……」
果たして、海水に浸かっている細い割れ目が見つかった。
体を斜めにして辛うじて人一人通れるくらいの竪穴だ。
水を躊躇するスパーキィは外で待たせることにした。
「OK、何かあったら──勿論、そんなことはないだろうけど、半日以上経っても俺達が戻らなかったら、その時は誰かに知らせてくれよ」
クレイはスパーキィの頭を撫でながら命じた。
「例えば、恋人のタイクーンの処へでも?」
スパーキィが嫌そうに鼻を鳴らしたのをサミュエルは見逃さなかった。
膝を濡らしてクレイとサミュエルは進んで行った。
すぐ明かりが必要になった。
クレイはチノパンツのポケットからライターを取り出してそれを灯りにした。本来なら、それは今夜の見張り台でのサヨナラパーティでキャンドルに火を点す為に用意したものだったが。
細い通路はすぐに果てて、空洞に出た。
「────……」
二人は無言のまま暫くその場に佇んでいた。
二人を絶句させたもの──