小説『とくべつの夏 〈改稿版〉』
作者:sanpo()

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 (  正直言って、今、私は動揺してこれを書いている。
    昨日、3/13(火)・1995
    〈墓堀人〉から電話があった。
    近い内に会いに来ると。会って話がしたいと。
    何てこった!
    あいつは私を見つけたのだ、20年も経った今になって……!
 
    呪うべき偶然!否、嗤うべき必然か?

    奴はよりによってこの島に、この春、別荘を購入したのだそうだ。
    そして、島の狭い通りで不動産屋の車の窓越しに私を見かけたのだと。
    奴なら、何処かエーゲ海の島を選べばよかったんだ。
    サントリーニ!クレタ!ミロス!デロス!
    島は山ほどあるってのに!

    それにしても──
    あの男の意図がわからない。
    私の方は彼の動静についてはある程度把握していた。
    何故なら、現在彼は、遠い異郷の地で出会った頃と違い、
    広く名の知れた権威ある地位にいるのだから。
    この昔の馬鹿げた犯罪行為について、今、彼自身はどう思っているのだろう?
    (そのことについて、私は訊いてみたい気もするが。)

    私が引っ被ってくれて彼は感謝しているかも知れない。
    それとも、まさか、今更、積荷の引渡しを要求するだろうか?

    勿論、渡すつもりはない。
   
    これはあくまで〈私の犯罪〉としてケリをつける。
    アンブローズ・リンクィストは掘り出し、計画し、解体し梱包したが、
    盗み取ったのは私だ。

    私が自分の口からこの場所を教える予定の、私の息子以外、ここへ至れる人間はいない。
    ──とは言うものの、もう悠長なことは言っていられなくなった!
     今年の夏こそ、サミーを呼ぶぞ!
     ああ、何してる、サミー?早く来い!      
)

 早く来い、の文の下に2本線が引いてあるのが印象的だった。

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